ハーフタイムで同点の試合。後半勝つのはランを確立したチーム...ではなく?
Ames · 2022-02-18
久しぶりの投稿です。スーパーボウルも終わり、2021-2022シーズンも完全終了ということで、少しでもオフの楽しみ(?)になるようにNFLの研究紹介を再開したいと思います。第2回です。(第1回はモメンタムの話でした、興味ある方はこちらから)
1. イントロ(飛ばしても大丈夫です)
スーパーボウル(以下SB)、接戦で良い試合でしたね。ドラフト指名権を惜しまない補強を続けて「オールイン」と言われていたLos Angeles Ramsが制しました。ポストシーズンで一発勝負の試合が続くNFLで、狙った年に実際に優勝してしまうのはすごい。自分もNFCCの49ers vs Rams @SoFi Stadiumを現地観戦したのですが、本当に強いチームでした。一緒に観戦した方が「今年はラムズの年だった」と言っていたのですが、そういうことなのだと思います。 さて、Kupp, Donaldなどのエース選手達に負けず劣らずラムズでよく注目されるのがHCのショーン•マクベイ。低迷していたラムズを見事復活させた手腕から天才と呼ばれることも多く、今回史上最年少36歳でSBを制覇した監督になりました。 そんなマクベイの記録としてよく語られるのが 「ハーフタイムでリードしていれば負けない」 と言う伝説です。実際、今年のWeek 18に途切れるまで45連勝していました。唯一後半逆転負けしたの何だっけ、と言う方は以下のリンクをクリックして、Jimmy Gを讃えてください。
https://www.espn.com/nfl/game/_/gameId/401326599 マクベイはハーフタイムのリードさえあれば、たとえ3点でもほぼ負けない–極端に言えば、前半の結果で後半の結果まで予想できる、と言うことです。
2. 今日の論文
そんな予想に少し関連した今回の論文は2014年にJournal of Sports Economicsという雑誌に発表されたもので、簡単に言うと 「前半終了時に同点の試合で、前半のデータから後半の試合展開を予測する」 という研究です。 タイトル:Predicting the Winner of Tied National Football League Games: Do the Details Matter? (前半終了時同点のNFLのゲーム、勝者を予想するのに試合内容は重要か?) 著者:Jared Quenzel, Paul Shea(ベイツ大学) 原文URL:こちら(大学とかでないと無料では読めないかも) 1994年から2012年までのNFLの試合のうち、前半終了時に同点だった429試合を集計して、パスヤード、ランヤード、攻撃回数、etc…といった試合における様々な要素が勝敗にどう影響するかを調べています。「前半であった出来事」と「試合結果」をグラフにプロットすることで、相関が分かって勝敗に直結するデータとしないデータが区別できる、というようなイメージです。 (「ハーフタイムで同点じゃない場合も調べてよ!」と思う方もいると思いますが、これは「リードしているとランが増える(逆も然り)」といったプレイコールの偏りが出るため、純粋に試合内容への影響を調べられるように同点の場合に絞っているようです) この論文が特に面白いのは、 「後半キックオフリターン側だと有利」 「前半でランを確立(establish the run)すれば有利」 などの、経験的に正しそうな仮説に注目して統計学的に議論している点です。
実際試合を見ていると「後半相手の攻撃からかぁ」「ランが出なくて苦しいなぁ」と言うように感じるのは割と自然かなと思いますが、このイメージは正しいのでしょうか?
(ちなみに、関連してランとパスの選択、アナリティクスに関してはこちらの記事(by 鷲の巣さん)がものすごく充実していて、かつ客観的で面白いのでおすすめです)
3. 結果:「これができれば後半有利になるはず!」というイメージの検証
以下、順に結果を見ていきましょう。文字が続くのでちょこちょこtwitterの切り抜きを入れていますが、あまり気にしないでください。
仮説1. 後半キックオフをレシーブしたチームは有利?
→ 統計的には影響なし(むしろ、後半レシーブが負けている方が少し多い)。 検証はされていないものの、「キックオフの開始地点(25ヤード前後)はフィールドポジションが悪いから、それを取ったことによって勝ちに傾いたりしないのだろう」というのが筆者の予想です。
仮説2. ランを確立できている(前半のランヤードが多い/ラン効率が高い)と有利?
→ 統計的には影響なし。 相関は全く見られませんでした。勝った試合ではリードすることで結果的にランプレーが多くなっているので、因果を逆にして「ランが出れば勝てる」というように誤解しているのではないか、と筆者は述べています。SEAのコーチがそんな感じのこと言ってましたね。
仮説3. 前半のオフェンスプレー数が多いとディフェンスが疲れるから有利?
→ 統計的には影響なし。 これは私の感想ですが、「一方が攻めまくってるのに同点」っていうのは、非効率なオフェンスということなので攻めてる側が負けるパターンもありそうだし、逆に何とか持ち堪えていたのが後半決壊して攻められてる側が負けるパターンもありそう。平均するとゼロに近くなるということですかね。
仮説4. 前半のターンオーバーが少ないと有利?
→ 統計的には影響なし。 これも「ターンオーバーが少ない丁寧なチームが後半をものにする」っていう考え方もできる一方で「ターンオーバー貰ってるのに同点止まり」って考え方もできるので、片方の影響に偏らないのかもしれません。
仮説5. 守備やスペシャルチームによる得点が多いと有利?
→ 統計的には影響なし。 前半でPick6投げてしまっても、同点で後半に進めば関係ありません。 でも前半はともかく、後半にスペシャルチームで失点するのは不利になる気がしますね。(某チームファンの方が読んでたらすみません)
4. 結果: 試合内容の中で大事なのはこの2つ
若干脱線しましたが、上の仮説は「統計的に有意な差はない」ばかりでことごとく否定されました。 有意だった要素はというと、以下の2つです。
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重要な要素1. QBサック数 ほぼ唯一、統計的にも明らかに試合の結果を左右するくらい重要だと分かったのが「サック数」です。なんと、 サック1回されるごとに1.7%勝率が下がるそう。 この理由として筆者は、「サックには相手QBのパフォーマンスを下げたり、怪我でバックアップQBが出てくる可能性を上げるといった直接的な効果があるからだろう」と予想しています(これは自分も納得)。試合におけるQBの重要性を示している結果とも言えますね。
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重要な要素2. パスゲーム ランではなく、パスヤードと勝率の相関は強いという結果が出ました。 ただこれは**「その日パスが出ていれば勝てる」というより、「強いチームはパスオフェンスが強い」という傾向による結果**のようです。Point Spread(賭け用の試合前の勝敗予想で、どちらがどのくらい有利か測る値)を考慮して補正するとパスヤード自体の影響はほぼゼロになる、と著者は付け足しています。 Point Spreadは勝率と強く相関しているので、「ハーフタイムで同点なら強い方のチームが勝つ」と言い変えられて、まぁ当然ですね。 以上を元に、著者は「ランを確立するとか試合内容とか言ってないで、ガンガンパスして付けられるだけ点差を付けるべき」という結論で締めています。アナリティクスっぽいですね。
5. まとめ
前半終了時に同点の場合、
- 重要と思われている多くの要素(後半キックオフのレシーブ、ランの確立、ターンオーバー、オフェンスプレー数)では統計的に有意な差は出ない
- 基本的にはチームの強さ(≒パスゲームの強さ)に左右される
- ただ、前半で**#DのQBサック数が多い方が有利な傾向**は明確に見られた
- そう考えると、RSもポストシーズンもサック食らいまくってるのにスーパーボウルまで行くJoe Burrowはやっぱりすごい ということで、入口がラムズ、出口がベンガルズになってしまいました。今年最後まで残った2チームを讃えて締めたいと思います。笑 長文の記事、最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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