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NFL事典

ヘルメットキャッチ (Helmet Catch) - Super Bowl XLII

Ames · 2026年7月11日


ヘルメットキャッチとは
  • 出来事: 残り1分15秒、3rd&5でEli Manningがサックを逃れ、David Tyreeがボールをヘルメットに押し付けて確保した32ヤードのパスプレー
  • 試合: 2008年2月3日、Super Bowl XLII。New York Giants対New England Patriots(University of Phoenix Stadium、現State Farm Stadium)— Giants 17–14 Patriots
  • 状況: Giantsは14–10でビハインド。Patriotsはレギュラーシーズンとプレーオフを通じて18勝0敗で、勝てばNFL史上初の19勝0敗となるところだった
  • 決定的だった理由: 自陣44ヤードからPatriots 24ヤード地点へ前進し、4プレー後の決勝TDを可能にした。キャッチ自体が得点ではなく、逆転への道をつないだプレーである
  • レガシー: TyreeにとってNFL最後のレシーブ。2019年のNFL 100 Greatest Playsでは史上3位に選ばれた

ザ・プレーの映像:

David Tyree's Helmet Catch — Super Bowl XLIIDavid Tyree's Helmet Catch — Super Bowl XLII — YouTube で見る ↗

1. 18勝0敗を止める、最後の攻撃

2008年2月3日、アリゾナ州グレンデールで行われたSuper Bowl XLIIは、New England Patriotsの完全シーズンがかかった一戦だった。レギュラーシーズンを16勝0敗で終え、プレーオフも勝ち上がったPatriotsは18勝0敗。対するGiantsは10勝6敗から敵地での3試合を勝ち抜いてきたワイルドカードチームだった。

第4クォーター、Tyreeの5ヤードTDでGiantsが10–7と一度は逆転した。しかし残り2分45秒、Tom BradyからRandy Mossへの6ヤードTDが決まり、Patriotsが14–10で再び前に出る。

Giantsは残り2分39秒、自陣17ヤードから最後の攻撃を始めた。4th&1をBrandon Jacobsのランで更新し、さらに2nd downではAsante Samuelが手にしたパスをインターセプトにできなかった。勝利へ届くまで、Giantsにはもう一つの大きな場面が残されていた。

Super Bowl XLIIの舞台となったUniversity of Phoenix Stadium(撮影: Ken Lund, 2006年, CC BY-SA 2.0, Wikimedia Commons より)Super Bowl XLIIの舞台となったUniversity of Phoenix Stadium(撮影: Ken Lund, 2006年, CC BY-SA 2.0, Wikimedia Commons より)

2. 残り1分15秒、3rd&5

残り1分15秒、Giantsは自陣44ヤード地点で3rd&5を迎えた。ここで止められれば、Patriotsは残り時間とフィールドポジションの両方で圧倒的に有利になる。Giantsの公式回顧記事によると、オフェンシブコーディネーターのKevin Gilbrideがコールしたのは「76 Union Y Sail」だった。

ショットガンからスナップを受けたManningには、Richard Seymour、Jarvis Green、Adalius Thomasらのプレッシャーが一気に迫った。Greenが肩をつかみ、Seymourも背中側からユニフォームを引いたが、Manningは倒れずにポケットを抜け出す。後年、Manning本人はこの一連を「NFL史上で最も幸運なプレーかもしれない」と振り返っている。

ただし、これは単に守備の包囲を抜けただけのプレーではない。Manningは後退しながら中央へ高いボールを放り、ダウンフィールドでTyreeに競らせる選択をした。その判断について、Manning本人は後年こう説明している。

"If that's the first quarter, I probably don't throw that pass. But fourth quarter, third down, running out of time, we needed a chunk and put it up for him."

(あれが第1クォーターなら、おそらくあのパスは投げていない。だが第4クォーター、サードダウン、時間もない。大きな前進が必要で、彼に向かって放り上げたんだ)

その一投が、試合の意味を変えた。

3. David Tyreeのヘルメットキャッチ

Tyreeは当時、主にスペシャルチームで起用される選手だった。2007年レギュラーシーズンのレシーブは4回・35ヤード、TDは0。それでもこの試合ではすでに5ヤードTDを挙げ、最終ドライブではRodney Harrisonとの競り合いに向かった。

Tyreeは両手でボールに触れた後、Harrisonに押されながら、落ちかけたボールをヘルメットの右側へ押し付けて確保した。記録は32ヤードのパス成功。GiantsはPatriots 24ヤード地点まで進み、残り0分59秒でタイムアウトを取った。投げた本人は、その瞬間に何が起きたかを把握していなかったという。

"I didn't know if he caught it or didn't catch it... I asked David, 'Did you catch it?' and of course every receiver always says they caught it."

(捕ったのか捕っていないのか、分からなかった。……Davidに「捕ったのか?」と聞いたよ。もちろんレシーバーというのは、いつだって「捕った」と言うものだけどね)

優勝パレードでヘルメットキャッチを再現するDavid Tyree。試合中の写真ではない(撮影: Ted Kerwin, 2008年, CC BY 2.0, Wikimedia Commons より)優勝パレードでヘルメットキャッチを再現するDavid Tyree。試合中の写真ではない(撮影: Ted Kerwin, 2008年, CC BY 2.0, Wikimedia Commons より)

このプレーは、片手でボールをつかみ取ったキャッチとして語られることがある。しかし映像と公式記録が示す本質は、Manningのサック回避、高く投げ上げたパス、TyreeとHarrisonの競り合い、そしてボールを落とさないためのとっさの固定が連続した点にある。

4. 4プレー後の決勝タッチダウン

ヘルメットキャッチの直後に試合が終わったわけではない。Giantsは途中でサックを許しながらも、Steve Smithへの12ヤードパスで3rd downを更新。そこから4プレー後、残り0分39秒、ManningはPlaxico Burressへ13ヤードのTDパスを通した。Giantsが17–14と再逆転する。

Patriotsには最後の攻撃が残ったが、Bradyの最後のパスは不成功に終わった。Giantsは同シーズンのレギュラーシーズン最終週にもPatriotsと接戦を演じており、その再戦で、18勝0敗のチームをスーパーボウルの舞台で止めた。

5. 「Helmet Catch」という名前と、その後

当初は「Catch-42」など複数の呼び名があったが、やがてプレーの決定的な動作を表す「Helmet Catch」が広く定着した。NFL FilmsのSteve Sabolはこれを「スーパーボウルが生み出した最高のプレー」と評している。

Tyreeはこの試合で3レシーブ・43ヤード・2TDを記録したが、その後NFLでレシーブを記録することはなかった。Helmet Catchは彼のNFL最後のキャッチになった。2008年にはBest Play ESPYを受賞し、NFL Filmsは2000年代のPlay of the Decadeに選出。2019年のNFL 100 Greatest Playsでは史上3位に位置づけられた。

この瞬間の意義は、キャッチの珍しさだけではない。3rd downでサックを逃れ、主力レシーバーではなかったTyreeが競り勝ち、完全シーズン目前のPatriotsを追い詰めた。一つのプレーの偶然性と、それを逆転勝利へ結びつけたドライブ全体が、Helmet Catchをスーパーボウル史の中心的な場面にしている。

Helmet Catchを振り返るX投稿:

6. 出典

Super Bowl XLII Gamebook
NFL公式ゲームブック — プレーごとの時計、距離、個人成績の一次記録
nflgsis.com
↗
Can't-Miss Play: David Tyree's helmet catch in Super Bowl XLII
NFL.com — Helmet Catchの公式ハイライト
nfl.com
↗
Eli Manning recalls Giants' run to Super Bowl XLII
Giants.com — 最終ドライブと「76 Union Y Sail」の回顧
giants.com
↗
The Helmet Catch: Looking back 17 years later
FOX Sports, 2025年 — Tyreeのキャリアとプレーの位置づけを振り返る記事
foxsports.com
↗
NFL 100 Greatest No. 3: David Tyree's helmet catch
NFL.com, 2019年 — NFL 100 Greatest Playsでの史上3位選出
nfl.com
↗
David Tyree's Helmet Catch — Super Bowl XLII
YouTube — ユーザー提供のプレー映像
youtube.com
↗

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