フェイル・メリー (Fail Mary) - 2012年審判ロックアウト
Ames · 2026年7月13日
- 出来事: 2012年9月24日のGreen Bay Packers対Seattle Seahawks、残り8秒の4th&10。SeattleのヘイルメリーがGolden Tateの24ヤードTDと判定され、Seahawksが14–12で勝利した
- 二つの争点: NFLは翌日、TateがSam Shieldsを押した行為はオフェンシブパスインターフェア(OPI)であり、本来はそこで試合終了だったと認めた。一方、TateとM.D. Jenningsの同時キャッチ判定はリプレーで覆さなかった
- 背景: NFLとNFL Referees Association(NFLRA)の労使交渉が決裂し、通常の審判がロックアウトされていた。開幕から第3週までは代替審判が試合を担当した
- 影響: 試合から2日後にNFLとNFLRAは8年契約で暫定合意した。NFL関係者は、この試合が唯一の決定要因ではないものの、合意への動きを加速させたと説明している
- 2026年: 次のCBA交渉でもNFLは代替審判の採用準備を進めたが、2026年5月8日に2032年シーズンまでの新協約が成立し、再導入は回避された
最終プレーの映像:
Fail Mary — Packers at Seahawks — YouTube で見る ↗1. 通常の審判がいなかった2012年
2012年シーズン開幕時、NFLのフィールドに通常の審判団はいなかった。リーグとNFLRAの労使交渉が合意に至らず、NFLが審判をロックアウトしたためである。リーグは代替審判を採用し、プレシーズンからレギュラーシーズン第3週まで試合を担当させた。
交渉の中心には、現役審判の確定給付型年金を確定拠出型へ切り替える時期があった。報酬、一部審判の常勤化、負傷や成績不振に備えるバックアップ審判団も争点になった。単に「判定技術」をめぐる対立ではなく、雇用条件と審判組織の設計をめぐる労使問題だった。
NFLの審判は多くが別の職業も持つ非常勤の立場だが、NFL特有のルール、7人のクルーでの分担、選手の速度に対応する経験が必要になる。The Ringerの10周年回顧によると、2001年の労使対立時に代替要員となったNFL EuropeやArena Football League、主要大学カンファレンスの審判を、2012年には同じように確保できなかった。採用された審判の多くは、NFLの育成候補でもなかった。
第3週までには、試合運営や反則判定への批判が強まっていた。Fail Maryの前夜に行われたPatriots対Ravensでも24回・218ヤードの反則が記録され、Bill Belichickが試合後に審判の腕をつかんだとして罰金を科された。Seattleで起きた最終プレーは、すでに揺らいでいた審判制度への信頼を一気に可視化した。
2. 残り8秒、4th&10
CenturyLink FieldでのMonday Night Footballは、守備が主導するロースコアの試合だった。Seattleは第2クォーターにRussell WilsonからTateへの41ヤードTDで7–0と先行したが、Aaron Rodgers率いるGreen Bayは後半に2本のFGとCedric Bensonの1ヤードTDランで12–7と逆転した。
Seattleは残り46秒、Green Bay 46ヤード地点から最後の攻撃を開始した。WilsonがSidney Riceへ22ヤードのパスを通してGreen Bay 24ヤード地点へ進んだ後、3本連続でパス不成功。残り8秒、4th&10となった。
Wilsonはエンドゾーン左奥へ高いパスを投げた。ボールの落下地点には両チームの選手が密集し、TateとPackersのセーフティM.D. Jenningsが空中でボールへ手を伸ばした。
2011年プレシーズンのPackers練習で捕球するM.D. Jennings(撮影: Gabriel Cervantes, 2011年, CC BY-SA 3.0, Wikimedia Commons より)
3. タッチダウンと、異なるシグナル
パスが落ちる直前、TateはPackersのコーナーバックSam Shieldsを両手で押し、Shieldsは倒れた。反則のフラッグは出なかった。その直後、Jenningsが両手でボールをつかみ、Tateもボールへ腕をかけたまま、2人はエンドゾーンへ落下した。
代替審判のLance Easleyは両腕を上げてタッチダウンを示した。一方、近くにいたDerrick Rhone-Dunnは時計停止のシグナルを出した。テレビ画面では二人が異なる判定を示したように見え、その場面そのものがFail Maryを象徴する映像になった。
フィールド上では、TateとJenningsが同時にボールを確保したとして、攻撃側に与えられる同時キャッチが認定された。リプレー・アシスタントが確認を開始し、主審Wayne Elliottは映像を確認したが、判定は維持された。公式ゲームブックには、残り8秒の4th&10からWilsonからTateへの24ヤードTD、リプレー後も判定維持と記録されている。
4. NFLが認めた誤りと、維持した判定
翌朝、NFLは公式声明を発表した。そこでリーグは、Tateがボールの空中にある間にShieldsを押した行為はOPIであり、本来は反則がコールされて試合が終了すべきだったと認めた。だがPIは審判の判断に属し、当時のリプレーでは新たに反則を宣告できなかった。
一方、同時キャッチについてNFLは別の結論を示した。当時の規則では、攻守の選手が同時にパスをキャッチして双方が保持すれば、ボールは攻撃側に与えられる。ただし、守備側が先に支配し、攻撃側が後から共同支配に加わった場合は同時キャッチではない。
NFLは、エンドゾーン内では誰がボールを保持したかもレビュー対象になると説明した。その上で、フィールド上のTD判定を覆す「明白で議論の余地のない映像証拠」がなかったとして、リプレー後の判定維持を支持した。つまりリーグの見解は、OPIの見逃しは誤りだったが、TDをリプレーで覆さなかった判断は支持する という二層構造だった。
映像を見た多くの解説者や通常審判経験者は、Jenningsが先にボールを支配したためインターセプトだったと評価した。The Ringerも10周年記事で同じ立場を取っている。しかし公式記録はTateのTDのままで、試合結果も変更されなかった。同じ判定騒動でも、当時の規則を適用したかが中心だったタック・ルール・ゲームとは異なり、Fail Maryでは見逃された反則、同時キャッチの事実認定、代替審判制度の三つが重なっている。
5. 14–12と、48時間後の合意
最終プレーで時計は0秒になったが、当時は試合終了と同時のTD後にもエクストラポイントが必要だった。多くのPackers選手がロッカールームへ戻った後、試合を完了するため一部の選手がフィールドへ呼び戻され、Steven Hauschkaがキックを成功させた。公式スコアはSeahawks 14–12 Packersとなった。
その2日後の9月26日、NFLとNFLRAは8年間のCBAで暫定合意した。通常の審判団は翌27日のBrowns対Ravensから復帰し、Gene Steratoreのクルーは観客からスタンディングオベーションを受けた。
公開された合意条件では、現役審判の確定給付型年金を2016年まで維持した後に凍結し、2017年から確定拠出制度へ移行した。平均報酬は2011年の14万9,000ドルから2019年には20万5,000ドルへ上昇。NFLには2013年から一部審判を通年雇用し、育成用の追加審判を保持する選択肢も認められた。
Fail Maryはしばしば「ロックアウトを終わらせた一つの判定」と要約される。ただしNFL.comが当時報じた交渉関係者の説明では、この試合は唯一の転換点ではなく、双方が合意へ進む動きを加速させた出来事だった。別のオーナーは、週末までに交渉が前進しており、月曜夜の試合がなくても同じ週に合意していた可能性が高いと述べている。
2013年のRams戦でのGolden Tate。Fail Mary当日の写真ではない(撮影: Mike Morris, 2013年, CC BY-SA 2.0, Wikimedia Commons より)
6. 2026年、再び浮上した代替審判
Fail Maryから14年後、代替審判の可能性が再び現実的な議題になった。2019年に結ばれたCBAが2026年5月31日に満了する予定だった一方、NFLとNFLRAの次期交渉は難航した。2026年3月末、AP通信はNFLが代替審判の採用・研修準備を進めていると報じた。
交渉では報酬の伸び率だけでなく、成績評価と年末ボーナス、プレーオフ担当者の選定、シーズンオフにリーグが審判へ接触できる期間、常勤審判の扱いなどが争点になった。報酬案の数値をめぐってはリーグ側情報とNFLRA側の説明が食い違っており、公表された数字を最終合意の条件とみなすことはできない。
NFLは代替審判を使う場合に備え、New Yorkのリプレーセンターがラフィング・ザ・パサーやインテンショナル・グラウンディングの見逃しなどについて、フィールド上の審判へ助言できる緊急案も準備した。2012年と同じ体制をそのまま繰り返すのではなく、中央から補助する設計だった。
最終的には5月8日、NFLとNFLRAが2032年シーズンまでの7年契約に合意し、代替審判の投入は回避された。NFLの公式発表は、新CBAが経済条件、パフォーマンス、説明責任を含む幅広い問題を扱うとしている。AP通信によると、オフシーズンの審判へのアクセス拡大、育成用の「ベンチ」、正式な研修制度、成績を重視したプレーオフ配置といったリーグ側の優先事項も盛り込まれたが、詳細な条文は公表されていない。
2026年の交渉でFail Maryは、過去の珍プレーとしてではなく、準備不足の代替審判をNFLの試合へ投入するリスクを示す前例として再び参照された。新CBAの成立は、2012年の教訓が制度上の警告として今も残っていることを示している。
7. 出典
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