ミネアポリス・ミラクル (Minneapolis Miracle)
Ames · 2026年7月10日
- 出来事: 残り10秒・1点ビハインドから、Case Keenum の 61 ヤード TD パスを Stefon Diggs が捕り、時間切れと同時に勝負を決めた逆転劇
- 試合: 2018年1月14日 NFCディビジョナル・プレーオフ、New Orleans Saints at Minnesota Vikings(U.S. Bank Stadium)— Vikings 29–24 Saints
- 歴史的意義: NFLプレーオフ史上初の「時間切れと同時の決勝タッチダウン」で終わった試合
- 名前の由来: Vikings ラジオ実況 Paul Allen の絶叫「It's a Minneapolis Miracle!」
- その後: Vikings は翌週の NFCチャンピオンシップで Eagles に 7–38 で敗退。2022年の NFL 100 Greatest Plays では史上9位に選出
ザ・プレーの映像:
The Minneapolis Miracle!(NFL 公式) — YouTube で見る ↗1. 試合の流れ
前半、Vikingsは着実に得点を重ね、17-0とリードして折り返した。この時点でのVikingsの勝利確率は、nflverse の WP(勝利確率)モデルでは 94.1% に達していた。
後半に入ると、Drew Brees と HC Sean Payton が率いる Saints のオフェンスが逆転に転じた。短いフィールドポジションを活かした攻撃を重ねて着実にスコアを詰め、第4クォーター残り0:25、Wil Lutzが43ヤードのフィールドゴールを決めてSaintsが24-23と勝ち越した。この時点でのVikingsの勝利確率は、nflverse のモデルでは 40.2% まで下落していた。
舞台となった U.S. Bank Stadium(撮影: Darb02, 2016, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons より)
2. ザ・プレー — Buffalo Right Seven Heaven
残り0:10、3rd&10、自陣39ヤード付近。タイムアウトを使い切ったVikingsに残されたのは、この1プレーだけだった。
コールされたプレーは "Buffalo Right (Key Left) Seven Heaven"。Keenum本人が2018年6月のBroncosファンイベントで明かした説明によれば、次のような構造になっている。
"Buffalo is our formation. It's three-by-one but it's a 'B' word -- buffalo -- so that's a bunch, and there's an 'f' in it so that means the f is at the point."
(「バッファロー」はフォーメーション名だ。3対1のセットだが、頭文字が「B」――バッファロー――なのでバンチ隊形を意味し、その中に「f」があるので「f」がバンチの先端にいる選手を示している)
「Buffalo Right Seven Heaven」のフォーメーション図。右側のバンチ隊形から Diggs(一番外)がディープコーナーの「7」ルートを走る(作図: Lamblings, パブリックドメイン, Wikimedia Commons より)
"Key Left" は6人ブロックのプロテクションを指すコール、そして "Seven Heaven" はレシーバーへのルート指示だった。「7」はディープコーナールートを意味し、Vikings内では「QBがこの7ルートにヒットすれば、天国的な(heavenly)何かが起きる」という理由でこの名がついたとされる。Diggsが走ったのが、まさにこの「7」ルートだった。
Keenumはディフェンシブタックル Sheldon Rankins の腕を越える形でパスを投げ、Diggsが自軍サイドライン付近でキャッチした。Saints の S Marcus Williams は、ジャンプしたDiggsの下に滑り込むようにタックルを試みたが失敗した。試合直後、Williams自身はこう振り返っている。
"It was just my play to make. The ball was in the air. I didn't go attack it...that's just on me."
(あれは自分が決めるべきプレーだった。ボールは空中にあった。自分は競り合いに行かなかった……それは自分の責任だ)
キャッチ後にバランスを崩しかけたDiggsは、左手を地面についてすぐに体勢を立て直し、サイドラインを踏むことなく61ヤードを走り切った。リプレー確認でも「インバウンズ」の判定が支持され、タッチダウンの成立と同時に試合終了となった。
3. データで見る奇跡
nflverse の play-by-play データ(2017シーズン)による WP モデルでは、前半終了時点で94.1%あったVikingsの勝利確率は、Lutzの逆転FG直後に40.2%まで下落し、さらに最終プレー直前(3rd&10、残り0:10、タイムアウトなし)には 25.3% まで落ち込んでいた。これは、この試合を通じてVikingsの勝利確率が最も低かった瞬間である。
最終プレーのエアヤードは27ヤード、キャッチ後のラン(YAC)は34ヤードで、合計61ヤード。nflverse のモデルがこのプレーの前に見積もっていた「タッチダウンになる事前確率」(td_prob)は、わずか 約1.1% だった。
4. 実況と名前の定着
Vikingsラジオ実況 Paul Allen(カラー解説 Pete Bercichとの掛け合い)は、このプレーを次のように実況した。
"Case on the deep drop, steps up in the pocket, he'll fire to the right side, CAUGHT BY DIGGS, OH MY GOD, STAY IN BOUNDS, OH MY GOD, HE GOT LOOSE, AT THE 30, THE 10, TOUCHDOWN! ARE YOU KIDDING ME? WHAT A MIRACLE FINISH! IT'S A MINNEAPOLIS MIRACLE! STEFON DIGGS AND THE MINNESOTA VIKINGS HAVE WALKED OFF ON THE NEW ORLEANS SAINTS!"
(キーナムがディープドロップ、ポケットの中で一歩踏み出し、右へ投げる、ディグスがキャッチ! なんてことだ、インバウンズにいてくれ、なんてことだ、抜け出した、30、10、タッチダウン! 冗談だろう!? なんという奇跡的な結末だ! これがミネアポリス・ミラクルだ! ステフォン・ディグスとミネソタ・バイキングスが、ニューオーリンズ・セインツ相手にサヨナラ勝ちを決めた!)
この実況の中でPaul Allenが発した「It's a Minneapolis Miracle!」という一言が、そのままプレーそのもの、そして試合の呼称として定着した。
5. その後
試合直後のロッカールームで、Keenumはまだ放心状態だったと明かしている。「あの瞬間は、ただ必死に戦っているだけだった……でも今は、すべてがぼんやりとしている(You're just fighting at that point... But right now, it's all a blur)」。
翌週のNFCチャンピオンシップ(2018年1月21日)で、VikingsはPhiladelphia Eaglesに7-38で大敗した。そのEaglesはそのままSuper Bowl LII(2018年2月4日)でNew England Patriotsを41-33で下し、フランチャイズ初優勝を果たしている。
Case KeenumはオフシーズンにDenver Broncosへ移籍した。Stefon Diggsもその後Vikingsを離れており、そのトレードで得た指名権の一つが後のJustin Jefferson獲得につながった。
2022年、NFL Networkの「NFL 100 Greatest Plays」でこのプレーは史上9位に選出された。現在もVikingsの本拠地TCO Performance Center(Eagan, MN)内のVikings Museumで、フランチャイズ史上の重要な瞬間の一つとして展示されている。
6. 出典
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