史上初の完全バーチャル開催:ラスベガスの計画は流れ、視聴者は5,500万人
速報 | #NFLDraft2020 #VirtualDraft #COVID19
当初はラスベガスのBellagio噴水前に水上ステージを設ける大がかりな式典として計画されていた2020年のNFLドラフトは、COVID-19の流行を受けて史上初の完全バーチャル開催に切り替えられた。コミッショナーのRoger Goodellはニューヨーク州Bronxvilleの自宅地下室に特設スタジオを構え、M&M'sを頬張りながら選手の名前を読み上げる。全32チームのGMとHCは、Microsoft TeamsやZoomを使って自宅からフランチャイズの未来を決めた。事前には「通信が切れる」「指名が遅れる」といった懸念が渦巻いていたが、大きなトラブルは起きなかった。ESPN・NFL NetworkによるABC同時放送は5,500万人の視聴者を集め、ドラフト史上最多となる。あわせて実施された慈善企画「Draft-A-Thon」では、3日間でCOVID-19対策基金に660万ドルの寄付が集まった。開催の強行には批判もあったが、結果として社会的な役割も果たす形になった。
出典: The Untold Stories of the NFL's 2020 Virtual Draft (NFL.com) The 2020 NFL draft is going virtual: How it will work (ESPN)
Joe Burrowが全体1位:Bengalsにとって順当な指名
解説 | #JoeBurrow #Bengals #LSU #HeismanTrophy
Cincinnati Bengalsが全体1位でLSUのJoe Burrowを指名することは、ドラフト当日の公然の秘密だった。2019年のハイズマン賞受賞者であるBurrowは、LSUでパス60TD・6INTという数字を残し、Zac Taylor HCが構築するゾーンベースのプレーアクション・オフェンスとの相性も良いと各メディアが評価していた。同じLSUからは全体32位(この年の1巡目最終指名)でRB Clyde Edwards-HelaireがKansas City Chiefsに指名され、ドラフトの最初と最後を同じ大学の同じシーズンのチームが占めるという、85年のドラフト史で初めての出来事も同時に起きている。「最悪の戦績のチームが最高の選手を手にした」と多くのメディアが報じ、Bengalsファンは再建の軸となる新しいフランチャイズQBを歓迎した。
出典: 2020 NFL Draft: Final quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com) 2020 NFL Draft Grades: Analysis of Every Team's Round 1 Pick (Sports Illustrated)
Jerry Jonesのウォールームは2億5000万ドルのヨット
珍事 | #JerryJones #Cowboys #SuperYacht #BravoEugenia
このドラフトで最もSNSを賑わせたウォールームは、オーナーの自宅でも球団施設でもなかった。Dallas CowboysオーナーのJerry Jonesは、推定2億5000万ドル(約270億円)とされる超豪華ヨット「Bravo Eugenia」の船内から参加した。マイアミのビスケーン湾に停泊する全長357フィートのこの船には、ヘリポート2基とスパが備わっている。余裕の表情でドラフトに臨むオーナーの映像はたちまち拡散し、「まるで映画007の悪役だ」と評されてミームになった。Jonesは全体17位でCeeDee Lambを即座に指名したが、その指名より背景のヨットのほうが全国ニュースになり、前例のないウォールームとして語り継がれることになった。
出典: Jerry Jones Drafted From His $250 Million Super Yacht (Fox Business) Jerry Jones Drafted From Aboard His $250 Million Yacht (Sports Illustrated)
豪邸、愛犬、マスク姿:自宅から映ったウォールームたち
珍事 | #KliffKingsbury #Belichick #Nike #HomeWarRoom
Arizona CardinalsのKliff Kingsbury HCは、アリゾナ州Paradise Valleyにあるガラス張りの豪邸のリビングから参加した。暖炉が揺らめく完璧なインテリアは映画『パラサイト 半地下の家族』の邸宅を思わせると話題になる。一方、New England PatriotsのBill Belichick HCのカメラが最初に映したのは本人ではなく、キャプテンチェアに鎮座してラップトップの前に陣取る愛犬の「Nike(ナイキ)」だった。やがて本人が現れたが、このやり取りはSNSで拡散し、張り詰めた空気を和らげた。New York GiantsのDave Gettleman GMが誰もいない部屋でマスクを着けて座っている映像も注目を集めたが、こちらは笑いがすぐ称賛に変わった。69歳のがんサバイバーである彼が、書類を届けるITスタッフへの感染リスクを避けるための配慮だったと明らかになったからだ。バーチャル形式が思いがけず開いた窓から、NFLの意思決定者たちの素顔が初めて全国に流れた3日間だった。
出典: Kliff Kingsbury's Home Steals the 2020 NFL Draft (Budwig Team) Top 10 moments of the 2020 NFL draft (Pro Football Hall of Fame)
DeAndre HopkinsがCardinalsへ:ドラフト前に成立した一方的なトレード
解説 | #DeAndreHopkins #Cardinals #Texans #Trade
ドラフト前で最も衝撃を与えたのは、3月に成立した大型トレードだった。Houston Texansはリーグ屈指のWR DeAndre Hopkinsを、RB David Johnsonと2巡目指名権(全体40位)、4巡目の交換だけでArizona Cardinalsへ放出した。多くのアナリストが「どう考えてもTexansの損が大きすぎる」「Bill O'Brien HCはなぜこの取引を承諾したのか」と首をひねった。Cardinalsにとっては、1巡目指名権のような大きな資産を使わずに長期の主軸WRを確保できた取引で、Kyler MurrayとHopkinsの組み合わせへの期待が一気に高まる。Bill O'BrienはHCとGMを兼任して強い権限を持っていたが、このトレードは後に「現代NFLで最も一方的な取引のひとつ」として語られることになった。
出典: Cardinals officially agree to DeAndre Hopkins trade (Arizona Sports) 2020 NFL Draft Grades: Analysis of Every Team's Round 1 Pick (Sports Illustrated)
Tua TagovailoaとJustin Herbert:全体5位・6位を分けた健康リスク
解説 | #TuaTagovailoa #JustinHerbert #Dolphins #Chargers
ドラフト直前まで最大の争点だったのが、全体5位のMiami DolphinsがTua Tagovailoa(Alabama大)とJustin Herbert(Oregon大)のどちらを選ぶかだった。Tuaは前のシーズンに股関節を骨折して手術を受けており、フィールドでの能力(1パスアテンプト平均11.27ヤード、TD率13.1%)は最高レベルだったものの、健康状態への懸念が評価に影を落としていた。一方のHerbertは強肩と規格外の体格でドラフトプロセスを通じて評価を上げ続け、「DolphinsがTuaの健康リスクを嫌ってHerbertを選ぶかもしれない」という観測が直前まで飛び交った。最終的にDolphinsのChris Grier GMはTuaに賭け、続く全体6位でChargersがHerbertを確保する。1位・5位・6位にQBが並んだこの展開は、現代NFLにおけるQBの価値の高さをそのまま映していた。
出典: 2020 NFL Draft: Key Storylines (beIN SPORTS) 2020 NFL Draft complete first round: picks, order, trades (AS USA)
PackersがJordan Loveを全体26位:Aaron Rodgersとの溝の始まり
衝撃 | #AaronRodgers #JordanLove #Packers #Drama
全体26位。このドラフトで最も驚かれた指名だった。Green Bay PackersがDolphinsとトレードアップし、Utah州立大のQB Jordan Loveを指名したのである。前シーズンを13勝3敗で終え、NFCチャンピオンシップゲームまで進んだチームが、大黒柱Aaron Rodgersの後継者候補に貴重な1巡目指名権を使った。ファンもメディアも「なぜ今なのか」と騒然となる。後日Rodgersはポッドキャストで「落ち込んだかって?当然だ。誰だってそうだろう。私は40代までプレーすると言っている。それなのにトレードアップしてLoveを指名した」と率直に語り、球団との間に生じた溝を隠さなかった。2005年にBrett Favreの後継者として自身が1巡目指名された状況との類似も盛んに指摘されたが、Rodgers本人はその比較を強く否定している。翌2021年のトレード要求騒動につながる一夜だった。
出典: Green Bay Packers trade up to get QB Jordan Love at 26 (NFL.com) The 16 Biggest Story Lines for the 2020 NFL Season (The Ringer)
EaglesがJalen Hurtsを2巡目53位:Carson Wentz在籍中のQB指名
解説 | #JalenHurts #Eagles #CarsonWentz #QBControversy
QBをめぐる驚きは1巡目のJordan Loveで終わらなかった。ドラフト2日目の全体53位、Philadelphia EaglesがOklahoma大のQB Jalen Hurtsを指名したことは、Packersの選択に匹敵する混乱をもたらした。当時のEaglesには巨額の長期契約を結んだフランチャイズQB Carson Wentzがいる。度重なる怪我に苦しみながらも、チームの絶対的なリーダーと見なされていた選手だ。それにもかかわらず価値の高い2巡目指名権をバックアップQBに使ったことは、多くの専門家の理解を超えていた。「Wentzへの露骨な保険なのか」「New OrleansのTaysom Hillのようなガジェットプレーヤーとして使うつもりか」と憶測が飛び交い、Howie Roseman GMの意図をめぐる議論がSNSを埋めた。当日のアナリスト評価は軒並み低かったが、それがのちにどう覆るかは、この時点では誰も知らない。
出典: 2020 NFL draft (Wikipedia) 2020 NFL Draft: Final quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)
史上最高と言われたWRクラスから、トップ10指名はゼロ
解説 | #CeeDeeLamb #JerryJeudy #HenryRuggs #WRDraft
事前には「歴史上最も層が厚い」と評されたWRクラスだったが、実際のドラフトはその予想を裏切った。CeeDee Lamb(Oklahoma大)、Jerry Jeudy(Alabama大)、Henry Ruggs III(Alabama大)はいずれもトップ10に値する才能と見なされていたが、QBとオフェンシブタックルへの需要に押し出され、誰一人としてトップ10で名前を呼ばれなかった。Ruggs(全体12位・Raiders)、Jeudy(15位・Broncos)、そして最も順位を落としたLamb(17位・Cowboys)は、いずれもモックドラフトの予想を大きく下回る位置での指名となる。CowboysはすでにAmari CooperとMichael Gallupを擁していたが、Jerry Jonesの「ボード上で最も才能のある選手を取る」という方針に従いLambを即指名した。WRというポジションがリーグ全体でどう評価されているかが、そのまま出た1巡目だった。
出典: 2020 NFL Draft: Key Storylines (beIN SPORTS) 2020 NFL Draft: Final quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)
OT4人がトップ15で消える:BucsはTom BradyのためにTristan Wirfs
解説 | #TristanWirfs #Buccaneers #TomBrady #OT
2020年のOTクラスは「第1層に4人のフランチャイズタックルがいる」と高く評価されていた。実際、Tristan Wirfs(Iowa大)、Andrew Thomas(Georgia大)、Jedrick Wills(Alabama大)、Mekhi Becton(Louisville大)の4人全員がトップ15以内で指名され、OTとしては珍しい集中ぶりとなった。中でも注目されたのがTampa Bay Buccaneersの動きだ。Bucsは全体14位と4巡目を49ersに渡して13位へ上がり、Wirfsを確保した(49ersはDeForest Bucknerのトレードで、Coltsから13位を得ていた)。その春にFAで加入したばかりのTom Bradyを守るブラインドサイド補強として高く評価され、「BradyとWirfsが揃えば来季のスーパーボウル候補だ」とアナリストを沸かせた。
出典: Six Draft Storylines that Could Affect the Buccaneers (Buccaneers.com) 2020 NFL Draft: Final quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)
Chase Youngが全体2位:Ohio State大が2位・3位を占める
解説 | #ChaseYoung #Washington #EdgeRusher #OhioState
Washington Redskinsが全体2位でOhio State大のエッジラッシャーChase Youngを指名したことは、このドラフトで最も異論の少ない選択のひとつだった。Dick Butkus AwardとChuck Bednarik Awardを同時受賞したYoungを、各メディアは「数年に一人のパスラッシャー」と評価し、Ron Rivera新HCのもとで再建の土台に据えるという判断は歓迎された。続く全体3位ではDetroit Lionsが同じくOhio State大のCB Jeff Okudahを指名し、2位・3位をOhio State大出身者が占める形になる。全体1位がLSUのBurrowだったことも含め、カレッジフットボールの二大強豪の選手輩出力が改めて示された。Youngの指名は「2020年ドラフトで明確に正解と言える数少ない選択」とまで言われ、バーチャル開催の慌ただしさの中でも際立っていた。
出典: 2020 NFL Draft Grades: Analysis of Every Team's Round 1 Pick (Sports Illustrated) 2020 NFL Draft: Final quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)
LSUから14人指名:2004年Ohio State大に並ぶ最多タイ
解説 | #LSU #TigersInTheDraft #DraftRecord #NationalChampions
2019年の全米王者LSUは、2020年ドラフトで合計14人が指名され、2004年のOhio State大に並ぶ7巡制ドラフトの最多タイ記録を作った。1巡目だけでも、全体1位のBurrowを筆頭に、K'Lavon Chaisson(20位・Jaguars)、Justin Jefferson(22位・Vikings)、Patrick Queen(28位・Ravens)、Clyde Edwards-Helaire(32位・Chiefs)と5人が指名されている。ドラフトの最初(1位Burrow)と最後(32位Edwards-Helaire)を同じ大学の同じシーズンのチームが占めるという、85年のドラフト史で初めての記録も同時に生まれた。Ed Orgeron監督が率いた15戦全勝のチームの選手層の厚さが、そのまま数字に表れている。同じSECからは合計63人が指名され、カレッジフットボールにおけるSECの存在感も改めて確認される結果になった。
出典: LSU ties record with 14 players chosen in NFL draft (theScore) LSU ties NFL Draft record with 14 players selected (NFL.com)
ESPNがTee Higginsのグラフィックを謝罪:選手の私生活をどこまで扱うか
炎上 | #ESPN #TeeHiggins #MediaEthics #TragedyPorn
中継の技術的な成功が評価された一方で、放送を担当したESPNはSNSで強い批判を受けた。全体33位(2巡目)でBengalsに指名されたTee Higgins(Clemson大)の紹介グラフィックに、「母親のKhalimaさんは16年間、薬物依存症と闘ってきた」というきわめて私的な情報を大きく表示して全国放送したためだ。視聴者からは「無神経すぎる」「Tragedy Porn(悲劇の消費)だ」という声が相次いだ。さらに全体26位で指名されたJordan Loveの紹介では、アナウンサーが父親の自殺の詳細まで語り、「悲劇を並べるノルマでもあるのか」と皮肉られた。Higgins本人はTwitterで「母が立ち直った姿を世界に知ってもらうことに問題はない」と応じたが、ESPNのプロダクション副社長Seth Markmanは後日「あのグラフィックは放送すべきではなかった。文脈が欠けていた」と公式に謝罪した。選手のトラウマをどこまで放送の素材にしてよいのか、スポーツメディアが自らに問い直す契機になった。
出典: ESPN apologises after 'drug addiction' NFL Draft graphic (FOX Sports AU) ESPN apologizes for Tee Higgins graphic during NFL Draft (247 Sports)
自宅から中継された指名の瞬間:Okwara兄弟と、椅子から落ちた父
感動 | #JulianOkwara #JavonKinlaw #VirtualDraft #FamilyMoments
バーチャル開催がもたらした最大の副産物は、選手たちが指名を受けるプライベートな瞬間がそのまま流れたことだった。3巡目(全体67位)でDetroit LionsがNotre Dame大のエッジラッシャーJulian Okwaraを指名すると、電話を受けた彼は顔を覆って泣き出した。Lionsにはすでに実兄のRomeo Okwaraが在籍しており、「俺たち、ルームメイトになるぞ」という叫びは、暗いニュースが続く日々に届いた明るい映像として広まった。1巡目(全体14位)でSan Francisco 49ersに指名されたSouth Carolina大のDT Javon Kinlawの自宅では、喜んだ父親が椅子から転げ落ち、そのまま床でカメラに向かってポーズを決める場面が放映され、家族のリアクション映像としてSNSを賑わせた。外出もままならない時期に届いたこれらの瞬間は、バーチャルドラフトが図らずも生んだ収穫として記憶されている。
出典: Top 10 moments of the 2020 NFL draft (Pro Football Hall of Fame) 2020 NFL Draft: Roger Goodell relieved after Day 1 goes well (NFL.com)
Stefon Diggs放出とJustin Jefferson指名:Vikingsの世代交代
解説 | #StefonDiggs #JustinJefferson #Vikings #Bills #Trade
ドラフト直前の3月、Minnesota VikingsはプロボウルWR Stefon Diggsを、1巡目指名権(全体22位)を含む複数の指名権と引き換えにBuffalo Billsへ放出した。Diggsは前シーズンも1,000ヤードを超えたチームの顔であり、ファンや一部メディアからは「なぜ今売るのか」という批判が上がった。ただしそのトレードで得た全体22位で、VikingsはLSUのWR Justin Jeffersonを指名する機会を得る。WRの評価が軒並みスリップする流れの中で、評価の高いJeffersonをこの順位で確保できたことは、アナリストの間で「Diggsを手放した痛みを少し和らげるバリューピック」と受け止められた。DiggsからJeffersonへという世代交代の賭けが、どう転ぶかはこれから見ていくことになる。
出典: Bills acquire WR Stefon Diggs from Vikings in trade (NFL.com) 2020 NFL Draft: Final quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)
