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2021年 NFLドラフト総括 – 歴史的な1年を超えてのクリーブランドへの帰還、史上屈指の豊作QBクラス

· 2021年5月1日 09:00


2021年 NFLドラフト総括 – 歴史的な1年を超えてのクリーブランドへの帰還、史上屈指の豊作QBクラス
Photo: Sports Illustrated

クリーブランド、パンデミック後の「帰還」:3日間16万人の熱狂

注目 | #Cleveland #NFLDraft2021 #BackInPerson

2020年の完全バーチャル開催から1年。NFLは2021年4月29日から5月1日にかけて、オハイオ州クリーブランドのFirstEnergy Stadiumとロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)周辺を舞台に、有観客ドラフトへの復帰を果たした。感染対策として1日あたり最大5万人の入場制限を設け、選ばれたファンのみが特設ステージ前の「インナーサークル」での観覧を許可されるハイブリッド形式が採用された。各球団のドラフトルームへのカメラ設置や、リモート参加する選手への機材提供(117のライブフィードを統合)という前例のない演出も実現し、バーチャルとリアルの融合が高度なプロダクションで完成した。3日間の総動員数は16万人に達し、会場に集まったファンたちは「フットボールの日常が戻ってきた」と口々に語り、熱狂とともにポスト・パンデミックの幕開けを祝った。

出典: NFL reveals plans for 2021 draft in Cleveland with select fans in attendance (ESPN) 160,000 people attended 2021 NFL Draft in Cleveland (Cleveland 19) Behind the Scenes: How the 2021 NFL Draft Was Produced (Van Wagner Events)


Trevor Lawrence「Tank for Trevor」:史上最も満場一致の全体1位

解説 | #TrevorLawrence #Jaguars #GenerationalTalent #TankForTrevor

2021年ドラフトで最も論争のなかった指名——それがJaguarsによるTrevor Lawrenceの全体1位選択だ。Clemson大でフレッシュマンシーズンから全国制覇(2018年)に貢献し、在学3年間でTD数90・INT数17という驚異的な成績を残したLawrenceは、アナリストから元選手、GMに至るまで「Andrew Luck以来——あるいはそれ以上に——満場一致のNo.1プロスペクト」と評価された。「10年に1人」という言葉さえ陳腐に響くほどの逸材、とメディアは表現し、その評価がほぼ全員一致というのは歴代QBドラフトでも極めて稀なことだ。2020年シーズン中には「Tank for Trevor(トレバーのために負け続けろ)」というフレーズがSNSで社会現象となり、最下位争いをするチームのファンたちが自らの敗北を笑って受け入れる逆説的な光景が各地で生まれた。1勝15敗で自然に全体1位権を手に入れたJaguarsは、新HC Urban Meyerのもとで「フランチャイズの礎」として彼を迎え入れ、翌朝のNFLメディアは「ついにジャクソンビルに本物のフランチャイズQBが来た」と一斉に書き立てた。

出典: Trevor Lawrence profile: Jaguars QB (NFL.com) 2021 NFL Draft: Day 1 quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com) 2021 NFL draft (Wikipedia)


全体1〜3位連続QB指名:1971年・1999年以来、史上3度目の快挙

解説 | #QBDraft #ZachWilson #TreyLance #QBClass

2021年はNFLドラフト史上屈指のQBクラスとして語り継がれることになる。Lawrence(1位)、Zach Wilson(2位・Jets)、Trey Lance(3位・49ers)と全体1〜3位がQBで埋まるのは1971年・1999年に続く史上3度目の快挙だ。さらに全体4位でTE Kyle Pittsが挟まった後も、Justin Fields(11位・Bears)、Mac Jones(15位・Patriots)と続き、1巡目の合計QB指名数は5人に達した——NFLドラフト史上2番目に多い1巡目QB数であり、2024年の6人に次ぐ記録だ。BYUのZach Wilsonは2020年シーズンに43TDに対しわずか3INTという驚異的なスタッツで急浮上し、過去のQBたちの失敗を忘れたかのような『楽観ムード』に包まれたJetsファンが熱狂的に歓迎した。パンデミック特有のサンプルサイズの小ささ・対戦レベルへの懸念を抱えながらも、5人のQBが1巡目で名前を呼ばれたこの年は「QB市場の天文学的なインフレ」の象徴として長く記憶されることになる。

出典: 2021 NFL Draft: Day 1 quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com) 2021 NFL draft (Wikipedia)


49ersの「巨大な賭け」:3つの1巡目を投じてTrey Lance獲得、極秘の情報戦

解説 | #49ers #TreyLance #TradeUp #SmokescreenNo1

2021年ドラフト最大のミステリーは、San Francisco 49ersの全体3位指名にあった。3月26日、49ersはDolphinsから全体3位を獲得するため、2021年の全体12位・2022年の1巡目と3巡目・2023年の1巡目という3つの1巡目指名権を含む莫大な対価を支払った。ドラフトが近づくにつれてメディアはMac Jones内定説を大きく報じていたが、これはShanahanが巧みに張った「煙幕(スモークスクリーン)」であり、真相を知っていたチーム内の人間はわずか4人だったという。大学での先発経験17試合・FCSレベルという限られた実績しか持たないNorth Dakota State大のTrey Lanceを選んだこの決断は、「天才オフェンス指導者のレガシーを決定づける巨大な賭け」として畏敬の念をもって報じられた。

出典: 2021 NFL Draft: What should the 49ers do with the No. 3 overall pick? (NFL.com) Morning Report: 2021 NFL Draft Recap (San Francisco 49ers) NFL Draft 2021: Burning questions, analysis, 49ers Pick 3, quarterbacks (FOX Sports Australia)


Alabama大1巡目6人:2004年Miamiとタイの歴史的記録

解説 | #Alabama #CrimsonTide #DraftRecord

Nick Saban HCが率いるAlabama大(Crimson Tide)が、単一大学の1巡目最多指名という歴史的快挙を打ち立てた。Jalen Waddle(6位・Dolphins)、Patrick Surtain II(9位・Broncos)、DeVonta Smith(10位・Eagles)、Mac Jones(15位・Patriots)、Alex Leatherwood(17位・Raiders)、Najee Harris(24位・Steelers)の合計6人が1巡目で名前を呼ばれ、2004年のMiami大(6人)に並ぶ史上最多タイの記録となった。またこのドラフトでBig 12カンファレンスから1巡目に指名された選手は一人もなく、これは1996年のカンファレンス発足以来初めての出来事だ。これほど多様なポジション(WR×2、CB、QB、OT、RB)でトップクラスのプロスペクトを輩出し続けるAlabama大の育成力は、他大学の追随を許さないレベルに達している。

出典: Alabama Has Record-Tying Six First-Round Picks (Sports Illustrated) 2021 NFL Draft: Day 1 quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)


Kyle Pitts:TE史上最高順位(全体4位)での指名

解説 | #KylePitts #Falcons #TE #Record

Atlanta FalconsがFlorida大のKyle Pittsを全体4位で指名したことは、タイトエンド(TE)というポジションにとって歴史的な瞬間だった——TEとして全体4位は現行ドラフト制度で史上最高の指名順位だ。Pittsは圧倒的なスピード・巨大なウイングスパン・滑らかなルートランを組み合わせた「今世紀最高のTEプロスペクト」と各メディアが絶賛し、通常のTEの枠を超えた究極のレシービング・ウェポンとして評価されていた。QB Matt Ryanとすでに在籍のJulio Jones、Calvin Ridleyとが形成するオフェンス陣に加わることで、Falconsのパスゲームが恐怖のレベルに達すると熱狂的に迎えられた。

出典: Falcons select Florida TE Kyle Pitts at fourth overall (NFL.com) 2021 NFL Draft: Day 1 quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)


Bengals「武器か盾か」:Ja'Marr Chase vs. Penei Sewell

解説 | #Bengals #JamarrChase #PeneiSewell #PositionalValue

Cincinnati Bengalsが全体5位で直面した選択は、2021年ドラフト最大の哲学的議論を生み出した。前年に獲得した全体1位QB Joe Burrowが、脆弱なOLによる保護不足でルーキーシーズンに膝靭帯を断裂した経緯があり、フロントオフィスはカレッジ界最高のOT Penei Sewell(「盾」)かLSU時代のBurrowの元チームメイトWR Ja'Marr Chase(「武器」)かの決断を迫られていた。Bengalsはフリーエージェントでのライン補強もあると判断し、最終的にChaseを選択。「再びBurrowを危険に晒すつもりか」というアナリストからの鋭い批判が飛び交う一方、バロウとチェイスが見せてきた圧倒的なケミストリーへの期待が膨らんだ。Sewell(Bengalsが選ばなかった方)はLionsが全体7位で指名することになった。

出典: 2021 NFL Draft: Day 1 quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com) NFL Draft 2021: Burning questions, analysis (FOX Sports Australia)


DeVonta Smith「スリム・リーパー」:166ポンドの体格は問題なし?

解説 | #DeVontaSmith #Eagles #Heisman #SlimReaper

ハイズマン賞を受賞したAlabama大WR DeVonta Smithは、その圧倒的な大学での実績とは対照的に、NFLの伝統的なフィジカル基準からは大きく外れた存在だった——身長183cmに対して体重わずか166ポンド(約75kg)は、プロのプレス・カバレッジや接触プレーに耐えられないという懸念を多くのスカウトが抱いていた。しかしPhiladelphia EaglesはDallas Cowboysとのトレードアップを実施してまで彼を全体10位で確保した。NFL選手会のドミトリ・グッドソン代表は「ついにNFLは選手が稼いできた形の選手を評価しはじめた」と歓迎し、スミスの指名はNFLが「サイズよりも空間創出能力とスピード」を重視するリーグへと急速に変貌していることを強く示した。

出典: 2021 NFL Draft Day 1 winners, losers: 49ers up, Justin Fields down (NFL.com) 2021 NFL Draft: Final quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)


Justin Fieldsの「謎の転落」と人種偏見の議論

ドラマ | #JustinFields #Bears #DraftSlide #Bias

Ohio州立大のJustin FieldsはPFFのカレッジ最高評価を受け、2021年QBクラスでZach Wilsonとほぼ並ぶ2番手評価という見方が優勢だった。しかし、ドラフトが近づくにつれて一部のメディアやスカウトから「労働倫理(ワークエシック)」や「知性」に疑問を呈する匿名情報が流れ、評価が不可解な形で下落した。多くのアナリストやファンはこの動きを、過去にLamar JacksonがWRへのコンバートを打診された出来事と重ねながら、黒人QBに向けられてきた歴史的な偏見やステレオタイプに基づくものだと強く反発し、ドラフト界隈で激しい議論を呼んだ。最終的にFieldsは全体11位まで滑り落ち、Chicago BearsがNY Giantsとのトレードアップで確保した。長年フランチャイズQBを持てずにいたBearsにとって「球団史上最高のQBを手に入れた」という歓喜の一方で、平均以下のOLと不安定なシステムという環境への懸念も同時に報じられた。

出典: 2021 NFL Draft Day 1 winners, losers: 49ers up, Justin Fields down (NFL.com) 2021 NFL Draft: Final quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)


Cowboys CB獲得の計画崩壊?Micah Parsonsを獲得(全体12位)

珍事 | #Cowboys #MicahParsons #PlanB #DraftSlide

Dallas Cowboysは全体10位を持ち、このドラフト最高評価の守備選手とされるCB 2枚(Jaycee Horn・Patrick Surtain II)のどちらかを獲得できると見込んでいた——前提条件として、Hornの指名権前にいるPanthers(8位)とBroncos(9位)がQBを指名することを期待していたが、両チームとも予想外にCBを指名する。「最高のターゲットが2人とも目の前で消えた」状況でCowboysはEaglesへのトレードダウン(12位)を選択し、Penn State大のLB Micah Parsonsを獲得した。ParsonsはCOVID-19でのオプトアウト明けで1年間の実戦ブランクがあったが、卓越したアスレチック能力を持つ現代型のオフ・ザ・ボールLBとして高く評価されていた。Day 2でもターゲットのS Trevon Moehrigが全体43位でRaidersに直前で奪われるという不運が続いたが、振り返れば「計画崩壊が生んだ最良のプラン」だとも言える。

出典: 2021 NFL Draft Day 1 winners, losers: 49ers up, Justin Fields down (NFL.com) 2021 NFL Draft: Final quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)


Mac Jonesのスリップ(3位→15位)とCam Newtonへの影響

解説 | #MacJones #Patriots #Belichick #CamNewton

全体3位指名の最有力候補として報じられていたAlabama大QBのMac Jonesが、実際には全体15位のNew England Patriotsまで落下したことは、メディアに衝撃を与えた。ただしPatriotsのBelichick HCにとってはむしろ「計算通りの指名」の可能性も高い——Jonesの卓越した判断力と正確性は、Matt Ryanや Kirk Cousinsを指導した際に見せたシャナハン的なポケットパサー系譜に近い「Xs and Os的に完成された」プロファイルであり、BelichickのシステムでTom Bradyが体現した姿に酷似していると評された。この指名は前年からカムバックを目指していたCam Newtonにとって深刻な脅威であり、「ニュートンは早々に先発の座を失う」と分析するメディアの声が一気に高まった。

出典: 2021 NFL Draft: Aaron Rodgers leads veterans who immensely benefited; Cam Newton's stock takes huge dive (CBS Sports) 2021 NFL Draft: Day 1 quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)


パンデミックにおける視界不良のスカウティング:オプトアウト選手の評価問題

解説 | #COVID19 #OptOut #ScoutingBlind #Combine

2021年ドラフトを語る上で欠かせないのが、COVID-19がもたらした情報の非対称性という特殊な環境だ。通常はインディアナポリスで行われるNFLスカウティング・コンバインが大幅に縮小され、メディカルチェックを受けた選手は例年の半分以下の約150名にとどまった。Daniel Jeremiahが「GMにとって医療データがないことほど恐ろしいものはない」と語ったように、後半ラウンドを中心に各チームは事実上の「盲飛行」を強いられた。2020年シーズンをオプトアウトしたJa'Marr Chase・Penei Sewell・Micah Parsons・Gregory Rousseauらについては「2019年時点のテープ」と「プロデーのアスレチック数値」が評価の拠り所となり、特にRousseauはプロデーでのパフォーマンス不振で全体30位(Bills)まで落下した。安全な実績を選ぶか、オプトアウト選手の過去を信じるかという判断が、各GMの哲学を浮き彫りにした。

出典: 2021 NFL Draft: Seven takeaways from Daniel Jeremiah's conference call (NFL.com) Biggest 2021 NFL Draft Steals: All Seven Rounds (PFF)


Jaguars Urban Meyer珍策:Travis Etienneを「WR転向」宣言

珍事 | #Jaguars #UrbanMeyer #TravisEtienne #PercyHarvin

Urban Meyer HCがNFLキャリアをスタートするや否や、ファンやアナリストを困惑させる発表があった。1巡目全体25位でClemson大のRB Travis Etienneを指名したことだ。すでに前年にドラフト外から大活躍を見せたRB James Robinsonがチームに在籍しているにもかかわらず、MeyerはEtienneをRBとしてではなく「サードダウンバック」あるいはWRとして起用する構想を発表——「かつてFlorida大で指導したPercy Harvinnのように使う」とも明言した。ファンタジーフットボール界隈は大混乱し、多くのアナリストが「なぜWR(例えばRashod Bateman)を指名しなかったのか」と猛烈に批判。1巡目のドラフト指名選手をコンバート前提で扱うという決断は、カレッジで大成功を収めたMeyerのNFL適応能力への強烈な疑問符として当時のメディアを駆け巡った。

出典: Urban Meyer plans to use Travis Etienne as the new Percy Harvin (FOX Sports) Harsh Criticism for Meyer Over Etienne Move to Receiver (Sports Illustrated)


Detroit Lionsの「938ポンドの塹壕戦」:Dan Campbellの哲学を体現

解説 | #Lions #DanCampbell #TrenchWarfare #PeneiSewell

「対戦相手の膝の皿に噛みつく」という就任会見での豪語が話題を呼んだDetroit LionsのDan Campbell HCは、そのアグレッシブな哲学をドラフトでそのまま具現化した。1巡目でカレッジ界最高のOT Penei Sewell(全体7位)を指名すると、2巡目でDT Levi Onwuzurike(41位)、3巡目でDT Alim McNeil(72位)と、強靭な肉体を持つラインメンを立て続けに選択。最初の3指名選手の合計体重は実に938ポンド(約425kg)に達し、チームが目指す最もフィジカルなアイデンティティを鮮明に打ち出した。Onwuzurikeが「相手のオフェンススキームを破壊したい」と豪語したように、Lionsの長期再建プロジェクトは最も泥臭いライン戦から始まっていた。Day 3(4巡目・全体112位)ではUSC(南カリフォルニア大)出身のWR Amon-Ra St. Brownを指名し、攻守にわたる骨格を築き上げる準備を整えていた。

出典: 2021 NFL Draft Day 1 winners, losers: 49ers up, Justin Fields down (NFL.com) 2021 NFL Draft: Final quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)

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