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2023年 NFLドラフト総括 – 歴史的動員と波乱のトレード劇、熱狂の渦に包まれたカンザスシティ

· 2023年4月29日 09:00


2023年 NFLドラフト総括 – 歴史的動員と波乱のトレード劇、熱狂の渦に包まれたカンザスシティ

Kansas City が熱狂の渦に:3日間で31万2,000人を動員

注目 | #DraftWeekend #KansasCity

ミズーリ州 Kansas City の Union Station と National WWI Museum を舞台に開催された2023年NFLドラフトは、3日間で合計31万2,000人という驚異的な観客を動員した。これはNFL史上2番目の観客動員記録である。第1ラウンドが行われた木曜日には12万5,000人が会場に押し寄せ、午後6時頃に一時的な入場制限がかけられるほどの熱気となった。

テレビ・デジタル合計の視聴者数も3日間で5,440万人に達し、前年比12%増を記録。木曜夜の第1ラウンドだけで3,420万人が画面に釘付けとなった。Fall Out Boy や Mötley Crüe によるコンサートも開催され、純粋なスポーツイベントを超えた「総合エンターテインメント」としての地位を改めて確立した。

出典: Record-breaking Audience Viewers Watch 2023 NFL Draft in Kansas City (Ministry of Sport) More than 54 million fans watch 2023 NFL Draft (NFL.com) NFL Draft takes over Kansas City (KC Sports Online)


バージニア大学銃撃事件の犠牲者へのトリビュート

速報| #Tribute

ドラフトの幕が上がる前、NFLは2022年の University of Virginia 銃撃事件で命を落とした3人のフットボール選手を「名誉指名選手」として厳粛に追悼した。彼らはそれぞれ Jacksonville Jaguars、Baltimore Ravens、Miami Dolphins の名誉指名選手として認定され、その名前と夢はNFLドラフトの記録に永遠に刻まれることになった。フットボールへの情熱を持ちながら未来を奪われたアスリートたちへの哀悼から始まった今年のドラフトは、初日から感情的な高まりに包まれていた。

出典: The First Read: Winners and losers from Round 1 of the 2023 NFL Draft (NFL.com)


2023年最大のプレドラフト大型トレード:Bearsの全体1位はPanthersへ

速報 | #Bears #Panthers #TradeUp #No1Pick

ドラフトの幕が上がる数週間前の3月11日、今年のドラフト全体の枠組みを決定づける大型トレードが成立した。Carolina Panthers は Chicago Bears から全体1位指名権を獲得するため、2023年の1巡9位・2巡61位、2024年の1巡指名権、2025年の2巡指名権、そして WR の D.J. Moore を放出した。

長年フランチャイズQBを持てず低迷していた Panthers が、将来の財産を総動員して「No.1 QBの確実な獲得」に踏み切った決断だった。一方で Bears は既に Justin Fields を抱えており、将来の複数の高順位指名権と実力のある No.1 WR を今すぐ手にする道を選んだ。このトレードがなければ今年の指名順は全く異なっており、2023年オフシーズン最大の動向として大きく報じられた。結果として Panthers は獲得した指名権でアラバマ大のQB Bryce Young を指名。体格面の懸念よりも、完成度とプロへの適応力を最優先した評価となった。

出典: The First Read: Winners and losers from Round 1 of the 2023 NFL Draft (NFL.com) 2023 NFL draft trade tracker (CBS Sports)


Texans の前代未聞の大博打:全体2位・3位連続指名

注目 | #Texans #WillAnderson #BackToBack

全体2位の Houston Texans はオハイオステイト大の C.J. Stroud を指名。事前に「QBを外してディフェンスの選手を指名するのでは」という報道も流れていたが、Nick Caserio GM は「クラスで最も精度の高いポケットパサー」をストレートに選択した。

驚きはこれだけではなかった。Texans は直後に Arizona Cardinals との大型トレードを電光石火で成立させ、全体3位の指名権をその夜のうちに手に入れたのだ。行使したのは、アラバマ大の世代屈指のエッジラッシャー、Will Anderson Jr. の指名。同一ドラフトの第1ラウンドで2位・3位を連続指名する荒技は、NFL史上でも極めて稀な出来事である。

このトレードで Texans は全体12位・2巡33位に加え、2024年の第1・第3ラウンド指名権を Arizona に提供(Texans側は全体105位も獲得)。莫大なドラフト資本の先行投資となったが、前年わずか3勝だったチームが、攻守の柱となるコアプレーヤーを一夜にして同時確保する姿に、Houston のドラフトパーティー会場は熱狂に包まれた。

出典: Texans trade up to select Will Anderson; draft profile and scouting report (FOX Sports) The First Read: Winners and losers from Round 1 of the 2023 NFL Draft (NFL.com)


Will Levis のグリーンルーム転落劇:生放送で流れた悪夢

ドラマ | #WillLevis #GreenRoom #DraftSlide

ドラフト前日時点で ESPN Analytics が「トップ10指名確率92%」と算出し、Reddit には「本人が全体1位指名を予告した」という匿名投稿まで拡散してラスベガスのオッズを乱高下させていたケンタッキー大の QB Will Levis。しかし、いざドラフトが始まると第1ラウンドで彼の名前が呼ばれることはなかった。

全米中継のカメラは、母親・姉妹・ガールフレンドと並んでグリーンルームのソファに座り続ける Levis を延々と映し続け、4時間以上にわたる待機はNFLドラフト史上屈指の「生放送の残酷なドラマ」として記憶されることになった。第1ラウンド漏れにより、想定されていた契約金との差は最大2,500万ドルにも上ると試算された。足の怪我に対する懸念に加え、面接での態度などパーソナリティ面に対するチーム関係者の厳しい評価がスリップ(順位の降下)の原因になったと報じられている。

出典: 'Cruel at this point': Hyped QB Will Levis' surprising NFL draft slide (FOX Sports AU) Why did Will Levis fall out of the first round of the NFL Draft? (FOX Sports) The NFL Draft's Shrinking Green Room (Front Office Sports)


Arizona のダウン&アップ:全体3位売却→6位で本命OT確保

解説 | #Cardinals #ParisJohnson #TradeStrategy

Arizona Cardinals の新任 GM Monti Ossenfort が見せたドラフトボードの操作は、まさに芸術的な手腕だった。Texans に全体3位指名権を売却する大型トレードに応じつつ、すかさず Detroit Lions との取引で全体12位から6位へと再浮上(トレードアップ)。

その結果、2024年の第1ラウンドをはじめとする豊富な将来指名権を蓄積しながら、チームの本命であったオハイオステイト大の OT Paris Johnson Jr. も無事に確保した。フランチャイズQB Kyler Murray のプロテクションを担う優秀なタックルを獲得しつつ、Texans から受け取った来季の1巡指名権は手元に残す――まさに「売って、かつ勝った」見事な戦略だった。

出典: How Round 1 of the 2023 NFL Draft went for the rest of the NFC West (The Rams) 2023 NFL draft trade tracker (CBS Sports)


RBがトップ15に2人:アナリティクスへの反逆

解説 | #BijanRobinson #JahmyrGibbs #PositionalValue

全体8位で Atlanta Falcons がテキサス大の Bijan Robinson を指名し、さらに全体12位で Detroit Lions がアラバマ大の Jahmyr Gibbs を指名したことは、現代NFLのアナリティクス文化に対する真正面からの挑戦だった。

RBのトップ10指名は2018年の Saquon Barkley(全体2位)以来であり、最初の12指名以内で2人のRBが選ばれたのは、2017年の Leonard Fournette(4位)と Christian McCaffrey(8位)以来の出来事だ。Falcons の Arthur Smith HC は重厚なラン中心のシステムへの適合性を根拠にし、Lions は Gibbs の生み出す「ミスマッチ」の質を理由に指名を擁護した。ポジションの相対的価値よりも、個人の絶対的才能とシステム適合性を優先する哲学が、この夜2度にわたって証明された。

出典: The First Read: Winners and losers from Round 1 of the 2023 NFL Draft (NFL.com) 2023 NFL Draft: Day 1 quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)


QB上位3人の指名、3つの異なる哲学:将来性に賭けたColtsの選択

解説 | #QBDraft #BryceYoung #CJStroud #AnthonyRichardson

第1ラウンドはトップ4の指名権のうち3つがQBに費やされ、現代NFLにおけるQBというポジションの絶対的な序列を改めて証明した。確実性を求めた Panthers や Texans とは対照的だったのが、全体4位の Indianapolis Colts の選択だ。彼らはフロリダ大の Anthony Richardson を指名した。大学での先発経験の少なさやパス精度の課題よりも、NFLスカウティングコンバインで披露した歴史的な身体能力と圧倒的な肩の強さという「究極のアップサイド(伸び代)」に賭けた形だ。

出典: 2023 NFL Draft: Day 1 quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com) The First Read: Winners and losers from Round 1 of the 2023 NFL Draft (NFL.com)


Detroit Lions の「独自哲学」ドラフト:2つの1巡指名権をRBとLBに

解説 | #Lions #BradHolmes #DanCampbell

Detroit Lions の Brad Holmes GM と Dan Campbell HC は、メディアのコンセンサス評価やポジション価値論を完全に無視した独自のドラフトを展開した。全体12位で RB Gibbs を指名したのに続き、全体18位でもオフボール・ラインバッカーの Jack Campbell(アイオワ大)を選択してメディアから批判を集めた。

さらに全体34位でも、TEとして最上位評価を受けていた Michael Mayer をパスし、Sam LaPorta(アイオワ大)を指名。しかし、全体45位にトレードアップして S Brian Branch(アラバマ大)を確保した点は「第1ラウンド候補の選手を第2ラウンドで手に入れた」と高く評価され、3巡68位での ACL 断裂療養中の QB Hendon Hooker(テネシー大)指名は「将来への低リスク投資」と分析された。外部の評価軸とチーム内部のスカウティングの断絶を示す、格好のケーススタディとなった。

出典: 2023 NFL Draft: Day 2 quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com) Lions take Tennessee QB Hooker on busy 2nd day of NFL draft (AP News)


ドラフト開幕直前の Lamar Jackson との契約延長、そして全体22位で Zay Flowers 指名

速報 | #Ravens #LamarJackson #Contract

4月27日の午後、ドラフト開幕わずか数時間前に Baltimore Ravens が元MVP QB の Lamar Jackson と、5年総額2億6,000万ドル・保証額1億8,500万ドルの大型契約延長に合意したことが報じられた。

数ヶ月にわたってリーグのオフシーズンニュースを支配してきた Jackson との交渉が、これ以上ないタイミングで決着。Ravens はQBの不確実性を完全に払拭した状態でドラフトに臨むことができた。この影響は即座に当夜の指名戦略に直結し、全体22位で Ravens はボストンカレッジの WR Zay Flowers を指名。フランチャイズQBを確定させた直後に、彼に最適なオフェンスの武器を補強するという一貫した戦略が完成した。

出典: Lamar Jackson, Ravens agree to terms on five-year, $260 million contract (NFL.com) The First Read: Winners and losers from Round 1 of the 2023 NFL Draft (NFL.com)


「Philadelphia Bulldogs」:Eagles が Georgia 大出身選手を立て続けに指名

注目 | #Eagles #Georgia #HowieRoseman

Philadelphia Eagles と Howie Roseman GM は、2023年ドラフト終了後に全メディアから満場一致で「勝者」と評価されたが、その戦略の中心にあったのは Georgia 大学への徹底した傾倒だった。

全体9位で DT Jalen Carter(オフ・ザ・フィールドの懸念で順位を落としていたものの、クラスNo.1の才能と評されていた選手)を、全体30位で OLB Nolan Smith をそれぞれ指名。さらに第4ラウンドで CB Kelee Ringo を指名し、同ドラフト中のトレードでは元 Georgia 大 RB の D'Andre Swift も獲得した。同じ大学のディフェンス選手をこれほど集中して指名する様は、メディアやファンの間で「Philadelphia Bulldogs」という異名で呼ばれるようになった。

出典: Eagles select Georgia defensive linemen Jalen Carter, Nolan Smith in first round of 2023 NFL Draft (NFL.com) The First Read: Winners and losers from Round 1 of the 2023 NFL Draft (NFL.com)


Day 2 以降の QB 事情:Levis の「救済」、Hooker は3巡指名でライオンズへ

ドラマ | #WillLevis #Titans #HendonHooker

木曜日の夜に全米の同情を集めた Will Levis の苦悩は、金曜日の Day 2 開始直後に終幕を迎えた。Tennessee Titans が全体33位で遂に Levis の名前を呼んだのだ。会場を去りコネチカット州の実家で待機していた Levis は、Mike Vrabel HC からの指名電話を受け、こみ上げる感情を抑えられなかった。「全体1位で指名されようが33位だろうが、私のワークエシックは変わらない。私を指名しなかったチームが間違いだったと証明する」と宣言した。

一方、ハイズマン賞の有力候補だった Hendon Hooker(テネシー大)は、シーズン終盤の ACL 断裂と年齢(25歳)がネックとなり、3巡68位で Detroit Lions が「将来への投資」として指名するまで待つことになった。最終的に5巡目までに、現行のドラフト制度では最多タイとなる12人のQBが指名される結果となった。

出典: Titans QB Will Levis reacts to NFL Draft slide (Yardbarker) Lions take Tennessee QB Hooker on busy 2nd day of NFL draft (AP News)


Patriots、キッカーとパンターを同一ドラフトで指名

珍事 | #Patriots #Kicker #Punter

Bill Belichick 率いる New England Patriots が第4ラウンドにトレードアップしてキッカーの Chad Ryland(メリーランド大)を指名し、さらに第6ラウンドでパンターの Bryce Baringer(ミシガンステイト大)を指名した。同一チームが同じ年のドラフトでキッカーとパンターの両方を指名するのは、2000年の Oakland Raiders(Sebastian Janikowski と Shane Lechler)以来、実に23年ぶりの光景だ。

スペシャルチームを極端に重視する Belichick らしい哲学の表れとも言えるが、ロスターや指名順位表に多くの穴を抱えながら、貴重な中位指名権をキッキングゲームに注ぎ込んだこの決断には、現地メディアから厳しい評価も相次いだ。

出典: 2023 NFL Draft: Pick-by-pick analysis for Day 3, Rounds 6-7 (NFL.com) 2023 NFL Draft: Day 2 quick-snap grades for all 32 teams (NFL.com)


感動の親子電話:Cowboys が自軍スカウトの息子・Deuce Vaughn を指名

感動 | #Cowboys #DeuceVaughn #FatherAndSon

3日間の最も胸を打つシーンは、Day 3 の第6ラウンド補償指名(全体212位)で訪れた。Dallas Cowboys がカンザスステイト大の RB Deuce Vaughn を指名した瞬間、ウォールーム(ドラフトルーム)にいた Cowboys のカレッジスカウティング部門アシスタントディレクター、Chris Vaughn 氏に対し、チームから「息子に自ら指名の電話をかける」という特別な栄誉が与えられた。

「ヘイ、相棒… 父さんだ。来週から、父さんと一緒に仕事場に来ないか?」――涙をこらえながら語りかける父親の言葉と、「もちろん、それは最高だよ」と答える Deuce の声を収めた動画はSNSで瞬く間に拡散し、ドラフト最大の話題(バイラルコンテンツ)となった。巨額のビジネスと冷徹な戦略が飛び交うドラフトに、血の通った人間としての温もりをもたらす瞬間だった。

出典: 2023 NFL Draft: Pick-by-pick analysis for Day 3, Rounds 6-7 (NFL.com) Deuce Vaughn: Secret Audio | Dallas Cowboys 2023 (YouTube)


Georgia 大学、2年間で25人指名の歴史的記録

解説 | #GeorgiaBulldogs #DraftRecord

2023年ドラフトでは Georgia 大学(Kirby Smart HC)から、アラバマ大と並ぶ全米最多タイの10選手がNFLに指名された。前年2022年の15選手と合算すると、わずか2年間で25選手がドラフト指名されたことになり、1966年の現行ドラフト制度開始以来最多となる2年間累計記録を樹立した。

指名された選手はDT、OL、OLB、TE、DB、QB、RBなど幅広いポジションに及ぶ。これほど多岐にわたるポジションでプロ水準の選手を継続的に供給できているという事実が、Georgia 大学の育成・リクルーティングプログラムの圧倒的な完成度を証明している。

出典: Georgia Ties for National Lead with 10 NFL Draft Selections (georgiadogs.com) Georgia Sets NFL Draft Record With 25 Picks Over Two Years (OutKick) Chargers, Rams bolster rosters with Day 3 picks of 2023 NFL Draft (CBS News LA)

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