- 日時・試合: 2019年11月14日、Pittsburgh Steelers対Cleveland Browns。Brownsが21–7で勝利したThursday Night Football
- 発生時点: 第4クォーター残り14秒、Steelers陣17ヤードの3rd&29
- 行為: Myles GarrettがMason Rudolphのヘルメットを外し、近づいてきたRudolphへ振り下ろして頭部付近に当てた
- 処分: Garrettは無期限出場停止となり、2019年残り6試合を欠場。2020年2月に復帰を認められた
- 後の争点: GarrettはRudolphから人種差別的な言葉を受けたと主張。Rudolphは否定し、NFLは裏付ける証拠を確認できなかったと発表した
残り14秒から乱闘までを映像で分解した解説:
1. 勝敗が決まった残り14秒
2019年11月14日、ClevelandのFirstEnergy Stadium。BrownsはSteelersを21–7でリードし、第4クォーター残り14秒を迎えていた。Steelersは自陣17ヤード、3rd&29。QB Mason RudolphがRB Trey Edmundsへ短いパスを通し、11ヤードを得た。
公式ゲームブック上、このプレーにはMyles GarrettのQBヒットが記録されている。パスを投げた後、GarrettはRudolphを芝へ倒し、両者は組み合った。勝敗を左右する局面ではない。それでも数秒の応酬が、試合そのものより長く記憶される事件へ変わった。
事件当日の試合前に撮影されたMyles Garrett(撮影: Erik Drost, 2019年, CC BY 2.0, Wikimedia Commons より)
2. ヘルメットが武器になった
映像で確認できる流れは次の通りである。
- 地面でもみ合う中で、RudolphがGarrettのヘルメットを引っ張った
- GarrettがRudolphを起こしながら、Rudolphのヘルメットを外した
- SteelersのDavid DeCastroがGarrettを引き離そうとした
- ヘルメットなしのRudolphがGarrettへ近づいた
- Garrettが右手に持ったRudolphのヘルメットを振り下ろし、Rudolphの頭部付近へ当てた
- Maurkice PounceyがGarrettを殴り、蹴り、DeCastroとともに地面へ押さえた
- Larry OgunjobiがヘルメットなしのRudolphを後方から突き倒した
Garrett、Pouncey、Ogunjobiの3人が退場に。試合は残り8秒から再開され、Brownsがボールを保持して終了した。
Garrettは試合後の声明で、責任を次のように認めた。
"I made a mistake, I lost my cool and I regret it."
(自分は間違いを犯し、冷静さを失った。それを後悔している)
"There's no acceptable excuse for my behavior."
(自分の行為を正当化できる言い訳はない)
RudolphがGarrettのヘルメットを引っ張ったことや、その後に近づいたことは映像に残る。しかし、それは外したヘルメットを頭部へ振り下ろす行為を正当化しない。
3. 無期限出場停止と各処分
翌11月15日、NFLはGarrettを少なくとも2019年レギュラーシーズン残りとプレーオフまで無期限出場停止とした。復帰にはコミッショナー事務局の承認が必要とされ、同時に罰金も科された。Garrettは控訴したが処分は維持された。
| 対象 | 当初の処分 | 最終的な扱い |
|---|---|---|
| Myles Garrett | 無期限停止、少なくとも2019年残りとプレーオフ | 6試合欠場、2020年2月12日に復帰 |
| Maurkice Pouncey | 3試合停止 | 控訴で2試合へ短縮 |
| Larry Ogunjobi | 1試合停止 | 維持 |
| Mason Rudolph | 出場停止なし | 5万ドルの罰金 |
| Browns / Steelers | 各25万ドルの罰金 | 維持 |
Garrettはこの停止で2019年残り6試合を欠場した。NFLは2020年2月12日、Goodellとの面談後に復帰を認めた。処分が当初から「6試合」と決められていたのではなく、無期限停止をシーズン後に解除した結果として6試合になった点が重要である。
4. 人種差別発言をめぐる三つの記録
処分への控訴過程でGarrettは、乱闘直前にRudolphが人種差別的な言葉を使ったと主張した。この点は事件映像だけでは確認できず、三つの立場を分けて記録する必要がある。
- Garrettの主張: Rudolphから人種差別的な言葉を受け、それが感情を爆発させる一因になった
- RudolphとSteelersの反応: Rudolphは「完全なでっち上げ」と否定し、Steelersも主張を支持しなかった
- NFLの結論: 放送音声や関係者への確認を行ったが、Garrettの主張を裏付ける証拠は見つからなかった
NFLは次のように発表した。
"We found no evidence to support the allegation that Mason Rudolph uttered a racial slur."
(Mason Rudolphが人種差別的な言葉を発したという申し立てを裏付ける証拠は見つからなかった)
「証拠が見つからなかった」は、録音などで発言が不存在と証明されたことと同じではない。一方で、Garrettの主張を確認済みの事実として書くこともできない。事件の動機に関するこの部分は、対立する主張とNFL調査の到達点を併記するのが最も正確である。
ヘルメット殴打直後のMason RudolphとMyles Garrett(撮影: Erik Drost, 2019年, CC BY 2.0, Wikimedia Commons より)
5. 2020年、Garrettは何を語ったか
復帰後の2020年10月、GarrettはESPNの取材で、Rudolphが差別発言をしたという主張を維持した。一方で、ヘルメットを振った自分の行為については「自分に責任がある」と改めて認め、事件を過去のものとして前へ進みたいと話した。
ここでも二つの論点は分離できる。きっかけについてGarrettが何を主張しているかと、映像で確認できる危険な行為への責任は別である。本人も後者を否定していない。
事件は、フィールド上の乱闘に対するNFLの処分が、プレー中の反則、選手安全、試合後の調査をまたぐ例となった。ヘルメットは防具であり、それを外して相手へ振り下ろした瞬間、通常の接触プレーを大きく越えた。
6. この事件が残した線引き
SteelersとBrownsの対立は長い歴史を持つが、ライバル関係は行為の説明にはなっても免責にはならない。この事件では、Rudolphのヘルメットを外すまでの相互の行為、Garrettのスイング、その後のPounceyとOgunjobiの行為が、それぞれ別に処分された。
復帰後のGarrettは再びリーグ屈指の守備選手となった。しかし競技上の成功は2019年の行為を消さず、事件の記録も将来の成績を否定するものではない。処分と復帰を両方記録することが、NFLの懲戒が何を罰し、どこで競技参加を再び認めたかを示している。