- 転機: 2022年、Calvin RidleyがNFLの試合へ賭けたとして少なくとも1シーズンの無期限出場停止になった
- 2023年の波: Jameson WilliamsらDetroit Lionsの4選手を含む10選手が、NFLへの賭け、または球団施設での他競技賭博により処分された
- 規定改定: 2023年9月、NFLとNFLPAはNFL賭博を重く罰する一方、職場での他競技賭博について段階的な処分へ整理した
- 選手と職員の違い: 選手は球団施設・遠征中を避ければ合法な他競技賭博が可能。コーチ、球団職員、リーグ職員は原則として全スポーツへの賭けが禁止
- 最新事例: 2026年7月17日、Cardinalsのスカウト部門幹部Ryan Goldが機密のドラフト情報提供と賭博規定違反で無期限停止となった
2023年4月、Lions勢を含む5選手の処分を伝えた解説:
1. 賭博が消えたのではなく、境界線が変わった
NFL選手の賭博問題は新しくない。1963年、Green Bay PackersのPaul HornungとDetroit LionsのAlex KarrasはNFLの試合へ賭けたとして1シーズン停止となり、ほかのLions選手5人も賭博関係者との交際などで罰金を受けた。
現代の転機は2018年だった。米連邦最高裁が Murphy v. NCAA で、各州によるスポーツ賭博認可を妨げていた連邦法PASPAを違憲と判断した。合法スポーツブックは州ごとに急拡大し、NFLも2021年にCaesars、DraftKings、FanDuelを公式スポーツベッティング・パートナーとした。
リーグが賭博企業と商業提携する一方、選手や職員には厳しい制限を課す。この二つは制度上、別の線で区切られている。NFLは合法市場から収益を得ても、試合結果、内部情報、選手の競技判断への疑念が生じれば競技の信用そのものが損なわれるため、関係者の賭博を制限している。
2. Calvin Ridley――5日間の賭けと1シーズン停止
2022年3月7日、NFLはAtlanta Falcons WR Calvin Ridleyを、少なくとも2022年シーズン終了まで無期限出場停止とした。Ridleyは2021年11月、メンタルヘルスを理由にチームを離れ、Non-Football Illnessリストにいた5日間に、NFLの試合を含む複数の賭けを行っていた。
NFLの調査は、内部情報の利用、試合への影響、コーチや選手の関与を示す証拠はなかったとした。それでも、自分が所属するFalconsを含むパーレーを組んだと報じられたことは、試合へ出ていない期間でもNFL賭博が禁止されることを明確にした。
Roger GoodellはRidleyへの書簡で、禁止の理由を次のように説明した。
"There is nothing more fundamental to the NFL's success — and to the reputation of everyone associated with our league — than upholding the integrity of the game."
(NFLの成功と、リーグに関わる全員の信頼にとって、競技の公正を守ること以上に根本的なものはない)
Ridleyは2023年3月6日に完全復帰を認められた。処分期間中にJacksonville Jaguarsへトレードされており、2023年シーズンから試合へ戻った。
Atlanta Falcons時代のCalvin Ridley(撮影: Keith Allison, 2018年, CC BY-SA 2.0, Wikimedia Commons より)
3. 2023年、Detroitから広がった処分
2023年4月21日、NFLは5選手への処分を発表した。Detroit Lionsからは4人が含まれ、Washington CommandersのShaka Toneyも対象となった。
| 選手 | 当時の所属 | 認定された違反 | 当初処分 |
|---|---|---|---|
| Quintez Cephus | DET | NFLの試合へ賭け | 無期限、少なくとも2023年全休 |
| C.J. Moore | DET | NFLの試合へ賭け | 無期限、少なくとも2023年全休 |
| Shaka Toney | WAS | NFLの試合へ賭け | 無期限、少なくとも2023年全休 |
| Jameson Williams | DET | 球団施設で他競技へ賭け | 6試合 |
| Stanley Berryhill | DET | 球団施設で他競技へ賭け | 6試合 |
Lionsは発表後、CephusとMooreを解雇した。Jameson WilliamsとBerryhillはNFLへ賭けたのではない。賭けの対象は合法な他競技だったが、球団施設という場所が規定に違反した。
6月29日には、Indianapolis ColtsのIsaiah RodgersとRashod Berry、Free AgentのDemetrius TaylorがNFL賭博で無期限停止、Tennessee TitansのNicholas Petit-Frereが職場での他競技賭博で6試合停止となった。7月にはDenver BroncosのEyioma UwazurikeもNFL賭博で無期限停止となった。
Alabama在籍時のJameson Williams(撮影: Bobak Ha'Eri, 2022年, CC BY 3.0, Wikimedia Commons より)
4. 2023年9月、処分体系を組み直す
同じ年に処分が相次いだことで、NFLとNFLPAは2023年9月29日に賭博規定の処分基準を改定した。
| 違反 | 基準となる処分 |
|---|---|
| NFLの試合へ賭ける | 最低1年 |
| 自分の所属チームの試合へ賭ける | 最低2年 |
| 八百長、試合結果を操作する行為 | 永久追放 |
| 内部情報の提供、代理人を通じた賭博 | 最低1年 |
| 職場・遠征中に他競技へ賭ける | 初回2試合、2回目6試合、3回目最低1年 |
新基準は、NFLそのものへの賭けと、合法ではあるが場所の規定に違反した他競技賭博の重さを分けた。この変更により、WilliamsとPetit-Frereは残っていた2試合分を免除され、4試合で復帰した。
現在の選手向けルールは「NFLへ賭けない」「球団施設や遠征中に賭けない」「代理人に賭けさせない」「内部情報を共有しない」「違法なスポーツブックを使わない」「デイリーファンタジーへ参加しない」という六つを中心に整理されている。選手は合法な他競技へ、職場外で賭けることはできる。
一方、コーチ、トレーナー、スカウト、球団やリーグの職員は立場が違う。彼らは選手より広い内部情報へアクセスするため、原則としてあらゆるスポーツ賭博が禁止される。
5. Ryan Gold――ドラフト情報と職員規定
2026年7月17日、NFLはArizona Cardinalsのdirector of college scouting、Ryan Goldを無期限停止とした。Goldは選手ではなく、大学選手の評価とドラフト準備に関わる球団幹部である。
NFLの発表によれば、GoldはArizonaが2026年ドラフトで指名する選手について、発表前の機密・非公開情報を外部へ提供した。さらにNFLと大学の試合を含むパーレーへ参加していた。リーグは聞き取りと電子記録の確認を行い、試合結果が影響を受けたと考える理由はなく、Cardinalsのほかの人物が把握または関与していた証拠もないとした。Goldには控訴の権利がある。
これはRidleyや2023年のLions勢とは違う種類の事例である。Goldには全スポーツ賭博を禁じる職員規定が適用され、さらにドラフトの内部情報提供が重なった。競技の公正は試合中の八百長だけでなく、ドラフトや人事に関する非公開情報の市場利用まで含むことを示した。
6. 「合法」と「NFL規定上許される」は同じではない
一連の処分で最も混同されやすいのは、州法上合法な賭けでもNFL規定へ違反しうる点である。Williamsの2023年処分はその典型だった。賭けの対象がNFLでなくても、球団施設でアプリを使えば違反になった。
逆に、すべての事例を八百長と呼ぶのも正確ではない。Ridley、2023年4月の5選手、Goldの各発表で、NFLは試合の不正操作を示す証拠はないと説明している。処分は、結果が実際に操作されたことだけでなく、内部情報の悪用や公正への合理的な疑念を防ぐために科される。
合法市場との公式提携が拡大するほど、選手と職員には「広告で目にするサービスを、いつ、どこで、何に使えるか」という細かな線引きが必要になる。2022年以降の出場停止の波は、賭博解禁時代のNFLが、その境界を処分と教育の両方で作り直した過程である。