フィリー・スペシャル (Philly Special) - Super Bowl LII
Ames · 2026年7月16日
- 出来事: 前半残り38秒、4th&goal・敵陣1ヤードで、Corey ClementへのダイレクトスナップからTrey BurtonがNick Folesへ1ヤードのTDパスを通したトリックプレー
- 試合: 2018年2月4日、Super Bowl LII。Philadelphia Eagles対New England Patriots(U.S. Bank Stadium)— Eagles 41–33 Patriots
- 構造: Folesが右へ動く間に、Clementがスナップを受けてBurtonへピッチ。Burtonは無人になった右フラットのFolesへ投げた
- 判断: Eaglesはフィールドゴールで3点を加える選択肢を捨て、4th downでTDを狙った。サイドラインでFolesが提案し、HC Doug Pedersonが実行を決めた
- 歴史的意義: Folesは同一Super BowlでTDパスとTDレシーブを記録した史上初の選手となり、Eaglesは球団初のSuper Bowl制覇を果たした
ザ・プレーの映像:
Philly Special: The CRAZIEST Eagles Play From Super Bowl LII(Philadelphia Eagles 公式) — YouTube で見る ↗1. 点の取り合いになったSuper Bowl LII
2018年2月4日のSuper Bowl LIIは、両チーム合計1,151ヤードを記録するオフェンス戦になった。New England Patriotsは連覇を目指し、Philadelphia Eaglesはフランチャイズ初のSuper Bowl制覇を目指していた。
Eaglesの先発QB Nick Folesは、Carson Wentzの負傷によって終盤から先発を引き継いだ控えQBだった。しかしNFCチャンピオンシップではMinnesota Vikingsを38–7で破り、同じU.S. Bank Stadiumで行われる大舞台へ進んだ。Vikingsがミネアポリス・ミラクルを起こしてから、わずか3週間後のことである。
第2クォーター、PatriotsもDanny AmendolaからTom Bradyへのパスを狙う関連型のトリックプレーを試みたが、Bradyは捕球できなかった。のちにFolesが成功させる場面と対照的な伏線になった。
Super Bowl LIIの舞台となったU.S. Bank Stadium(撮影: Darb02, 2016, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons より)
2. 残り38秒、4th&goal
Eaglesが15–12とリードした前半残り53秒、Corey Clementの6ヤードランでPatriots陣2ヤードまで進んだ。続くランは1ヤード、Nick FolesからAlshon Jefferyへのパスは不成功。残り38秒、EaglesはPatriots陣1ヤードで4th&goalを迎えた。
フィールドゴールを選べば、成功時には6点差で前半を終えられる。失敗すれば得点はゼロ。その場面でサイドラインへ来たFolesがPedersonに持ちかけた言葉が、NFL Filmsの映像に残った。
"You want Philly, Philly?"
"Yeah, let's do it."
(「Philly, Phillyで行く?」「ああ、やろう」)
チーム内でのプレー名は「Philly Special」だった。Folesは2024年の回顧で、なぜその瞬間だけ「Philly, Philly」と呼んだのか自分でも分からないと話している。呼び方より重要だったのは、QBからの提案をHCが即座に採用し、Super Bowlの4th downで実行に移したことだった。
3. 4人でつないだタッチダウン
プレーは、通常のQBがスナップを受けて投げる形を崩し、守備の視線を段階的にずらすよう設計されていた。
- Folesはショットガンの位置から右へ動き、オーディブルを伝えているように装った
- C Jason Kelceが、FolesではなくRB Corey Clementへダイレクトスナップした
- Clementは左へ走りながら、逆方向から回ってきたTE Trey Burtonへボールをピッチした
- 高校・大学時代にQB経験のあるBurtonが右へ投げ、カバーされていなかったFolesがエンドゾーンで捕球した
公式記録は「Trey BurtonからNick Folesへの1ヤードTDパス」。FolesにとってNFLでの初レシーブであり、同一Super BowlでTDパスとTDレシーブを記録した史上初の選手になった。Jake Elliottのエクストラポイントも成功し、Eaglesは22–12で前半を終えた。
Burtonには、もしFolesが守備につかれた場合は無理に投げず、自分で走る選択肢も与えられていた。ところがPatriots守備はボールの動きへ引きつけられ、Folesのいる右フラットを完全に空けた。複雑な動きに見えても、最後の判断は「Folesが空いていれば投げる」という明快なものだった。
4. Philadelphiaが発明したプレーではない
フィリー・スペシャルの価値は、Eaglesがまったく新しい仕組みを発明したことにあるわけではない。類似する発想はカレッジやNFLですでに使われていた。
Eaglesのオフェンシブ・クオリティ・コントロールだったPress Taylorは、Chicago Bearsが2016年にMinnesota Vikings戦で成功させたTDプレーを映像から見つけ、オフェンスのアイデアとして提案した。その試合の会場もU.S. Bank Stadiumだった。Frank Reichらコーチ陣がEagles用に調整し、シーズンを通じて練習していた。
さらにPatriotsも2015年に、Tom BradyがDanny Amendolaからパスを受ける関連プレーを成功させている。ただし、これらはすべて配置やボールの渡し方まで同一ではない。Eaglesが歴史に残したのは「原型」ではなく、既存のアイデアを自分たちの人員へ合わせ、Super Bowlの4th&goalで選び、寸分違わず実行したバージョンだった。
Folesは後年、アイデアを提案したのは自分でも、実際にコールを決めたPedersonが称賛されるべきだと強調した。成功を一人のひらめきに還元できない点も、このプレーを象徴的にしている。
5. 初優勝を引き寄せた一手
フィリー・スペシャルだけで勝負が決まったわけではない。後半、PatriotsはTom BradyとRob Gronkowskiを中心に追い上げ、第4クォーターには33–32とこの試合で初めてリードした。
EaglesはFolesからZach ErtzへのTDパスで再逆転。その後、DE Brandon GrahamがBradyをサックしてファンブルを奪い、Jake Elliottのフィールドゴールで41–33とした。Patriots最後のHail Maryも不成功に終わり、Eaglesは1960年以来57シーズンぶりのNFL優勝、そしてフランチャイズ初のSuper Bowl制覇を達成した。
Folesは28/43、373パスヤード、3TD、1INTに加え、1ヤードのTDレシーブを記録してSuper Bowl MVPに選ばれた。一つのプレーだけで勝敗のすべては説明できない。それでも、フィールドゴールではなくTDを取り切った判断が、8点差の最終結果まで大きく残った。
EaglesのSuper Bowl LII優勝パレードに登場したNick Foles(撮影: Governor Tom Wolf, 2018, CC BY 2.0, Wikimedia Commons より)
6. 名前とレガシー
サイドライン映像の「Philly, Philly」という短いやり取りは、プレーそのものと同じくらい有名になった。しかしチーム内の正式な呼称は「Philly Special」であり、一般に定着した名前もこちらである。
2018年9月、Lincoln Financial Fieldの外には、プレー前のFolesとPedersonの会話を再現した銅像が設置された。NFLの100周年企画「100 Greatest Plays」では史上10位に選ばれている。
Folesは2024年、Eaglesの一員として現役引退を発表した際にもこのプレーを振り返った。本人にとって当時の目的は、前半終了前に点を取り、試合に勝つことだけだったという。だがPhiladelphiaにとっては、控えQBの提案、HCの決断、4人の連係が一つになり、長く待った初優勝を象徴する場面になった。
7. 出典
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